また、読む年齢によって感じ方が違うのも大きな魅力です。子供の頃に読んでいた絵本を広げると、音楽と同じで、たちまち当時にタイムスリップできます。その本を広げている間だけは、幼い頃、親に読んでもらっていたときのワクワクした気持ちや、親と交わした言葉など、家族との思い出に浸れます。
『トラとミケ』を読んでいると、四季折々の背景や古き良き小道具に、誰もが持っている懐かしくて大事な思い出を重ね合わせることができます。勢いで読み進んでしまう漫画が多い中、この作品は何かに思いを馳せながら、ゆっくり読み進めて行きたい。そう思わせてくれる作品です。
【Profile】
丸山裕子さん●1967年生まれ。紀伊國屋書店新宿本店副店長。書店HPでは「ネコンシェルジュの本棚」というコーナーで猫に関する本を紹介。私生活でも猫とのいとしい日々を満喫している。
※女性セブン2019年7月4日号