「とにかく活発な子で、スポーツテストではハンドボール投げや50メートル走など、すべての項目でずば抜けていた。負けず嫌いでしたね。私は仙台大学時代に野球部に入っていて、1学年後輩にプロ野球に進んだ熊原健人(現・東北楽天)、3学年後輩に馬場皐輔(現・阪神)がいた。そういう選手を間近で見る経験をした上で、卒業後すぐ大船渡第一中学に勤務することになったんですが、朗希は球速こそ120キロ台でも、素材という点では見劣りしなかった。

 ふと思うんです。投手としての球の速さは、瞬発力と大きく関わりがあるんじゃないかな、って。朗希は中学時代、クラス対抗リレーなんかに必ず選ばれていました。高校進学後も、150キロを出した頃には、『50メートルを5秒台で走った』という噂が聞こえてきました。さすがに163キロには驚きましたが、それに至ったのは彼の瞬発力が大きく影響しているのではないでしょうか」

 中学時代から佐々木は研究熱心だったという。理想のフォームを探し、情報を集めてグラウンドで実践していた。

「野球脳が賢いとでもいうのかな。たとえば、野球の技術書を読んで、自分もこう投げたいというフォームが見つかったら、マウンドで再現する。その能力が高かった」

 現在も大船渡第一中学で、軟式野球部のコーチを務めているのは、地元の消防署で救命士として働く鈴木賢太氏だ。彼は佐々木の3歳上の兄も同校で指導した経緯がある。

「入学した時点では朗希の身長はまだ160センチ台で、中学3年間で20センチ以上伸びました。成長痛とうまく付き合わなければならず、腰も疲労骨折して投げられなかった時期が本当に長かったんです」

 佐々木が中学時代にエースナンバーを背負ったのは、中学2年生の秋だけだ。そして3年生になる直前の2016年初春に腰の疲労骨折が判明した。

 腰の痛みを訴えた当初、大船渡市内の病院に行くと、「身体が硬いだけ」と言われたが、鈴木氏は釈然としなかった。入学前から、投手として成長していく上での柔軟性の大切さを、兄を通じてアドバイスし、中学入学後も佐々木はストレッチなどを怠らなかったからだ。それゆえ、鈴木氏は同じく成長痛に苦しんだ大谷翔平が高校時代に通った青森県八戸市の病院に連れて行き、そこで疲労骨折と診断されたのである。

 医師からは「このまま、だましだまし投げることは可能で、夏の大会(中総体)に出たらチームも勝てるかもしれない。しかし、この選手は、ものすごい選手になる可能性を秘めている。これから身長もまだまだ伸びていくだろう。だから、この時期を棒に振ってでも、完治を優先させるべきかもしれない」と説明された。最終判断は鈴木氏ら指導者に託されたのである。

 鈴木氏たちが迷うことはなかった。

「朗希は投げたかったと思います。最大の目標を最後の大会に置いていましたから、夢を奪われたような気分だったかもしれない。朗希は悔しくて、ボロボロ泣いていました。でも、その病院のトレーナーさんが、『頑張れば、もしかしたら間に合うかもしれないから』と声をかけてくれて……」

関連記事

トピックス

10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《梨園に誕生する元アイドルの嫁姑》三田寛子と能條愛未の関係はうまくいくか? 乃木坂46時代の経験も強み、義母に素直に甘えられるかがカギに
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(クマの画像はサンプルです/2023年秋田県でクマに襲われ負傷した男性)
ヒグマが自動車事故と同等の力で夫の皮膚や体内組織を損傷…60代夫婦が「熊の通り道」で直面した“衝撃の恐怖体験”《2000年代に発生したクマ被害》
NEWSポストセブン
対談を行った歌人の俵万智さんと動物言語学者の鈴木俊貴さん
歌人・俵万智さんと「鳥の言葉がわかる」鈴木俊貴さんが送る令和の子どもたちへメッセージ「体験を言葉で振り返る時間こそが人間のいとなみ」【特別対談】
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン
佳子さまの“ショッキングピンク”のドレスが話題に(時事通信フォト)
《5万円超の“蛍光ピンク服”》佳子さまがお召しになった“推しブランド”…過去にもロイヤルブルーの “イロチ”ドレス、ブラジル訪問では「カメリアワンピース」が話題に
NEWSポストセブン
「横浜アンパンマンこどもミュージアム」でパパ同士のケンカが拡散された(目撃者提供)
《フル動画入手》アンパンマンショー“パパ同士のケンカ”のきっかけは戦慄の頭突き…目撃者が語る 施設側は「今後もスタッフ一丸となって対応」
NEWSポストセブン
大谷翔平を支え続けた真美子さん
《大谷翔平よりもスゴイ?》真美子さんの完璧“MVP妻”伝説「奥様会へのお土産は1万5000円のケーキ」「パレードでスポンサー企業のペットボトル」…“夫婦でCM共演”への期待も
週刊ポスト
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン