芸能

「晴れ女」はいる? 『天気の子』新海監督&雲研究者対談

新海誠監督(左)と雲研究者・荒木健太郎さん(右)

 興行収入250億円を記録した『君の名は。』から3年。時代の寵児となった新海誠監督(46才)が手がけた最新作『天気の子』は公開から3日で約120万人が鑑賞。興行成績16億円を突破し、多くの人の心を動かしている。

 新海監督が最新作のテーマに選んだのは「天気」。彼は天気の何を切り取り、どのように描いたのか。雲研究者・荒木健太郎さん(34才)による気象監修のもと完成した映画『天気の子』に込めた思い、人間と天気の関係を2人が語り合った。

 本作の主人公は、離島から家出して東京にやってきた帆高と、不思議な力を持つ陽菜。ひょんなことから出会った少年と少女は、降りしきる雨の中を疾走する。

新海誠(以下、新海):陽菜は「祈る」ことで空を晴れにできる不思議な能力を持った女の子。神様に願いを届ける役割を負ったキャラクターです。

 帆高は家出少年ですが、「ここではないどこか」に憧れて突っ走るという、10代の衝動を純粋に体現するキャラクター。自分では制御できない欲求に突き動かされ、とにかく外の世界を知りたくて人と出会いたいという少年です。

 そんな2人が同じ空の下で出会い、立ち止まることなく、ただまっすぐ走り抜けていく姿を描きたかった。

荒木健太郎(以下、荒木):この映画は最初からずっと雨が降り続いていましたが、陽菜ちゃんの「ねぇ、今から晴れるよ」というせりふが印象的でした。

新海:ありがとうございます。アニメーション的にいえば、そのせりふは男の子に媚びるような印象にすることもできるんです。でもそうならずに陽菜の魅力を引き出したのは、声優キャストの森七菜ちゃん(17才)の力だと思います。

 天気って不思議なもので、雨が降っていて憂鬱でも、晴れてくると途端に気持ちが明るくなることがありますよね。作中にもありますが「空模様で心が動く」んです。ところで荒木さんは、陽菜のような晴れ女や、雨女はいると思いますか?

荒木:それを私に聞きますか(苦笑)。まあ、科学的には、いないですね。ただ、天気の変化を知るきっかけとなる雲はありますよ。作中ではそれがすごくうまく表現されていて、すごいなと思いました。

新海:たとえば荒木さんが専門とする積乱雲ですよね。

荒木:はい。積乱雲は、山や巨大な塔のように上層まで発達した重く濃密な雲です。大雨や竜巻などの原因になります。雲が発達できる限界の高度である「対流圏界面」までモクモクと達すると、今度は積乱雲の頭の部分が横に広がって「かなとこ雲」ができる。かなとこ雲の上にあるモコッとした部分は積乱雲の上昇力がとても強く、成層圏まで達しています。そんな積乱雲の下の地上は土砂降りになります。

新海:陽菜が雲の上にいるシーンがあるのですが、それはかなとこ雲のいちばん上です。だからその下の東京は豪雨なんです。

劇中で描かれている「かなとこ雲」。成長した積乱雲の頂上部分が広がって平らになっている(C)2019「天気の子」製作委員会

関連キーワード

関連記事

トピックス

ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン