ライフ

フットサルに「つるんで来る奴にはパスを出さない」が象徴すること

その場で即席のチームを作ってプレーする人たちも多い(イメージ)

 パソコンやスマートフォンのみならず、AI(人工知能)に自動運転など、私たちを取り巻くテクノロジーの進歩は著しく、もはやすべてのひとたちが適応するのが難しいほどの状況になりつつある。

 作家の橘玲氏は、新刊『上級国民/下級国民』(小学館新書)で、そうしたテクノロジーの進展がもたらす「知識社会化」によって、「上級国民」と「下級国民」の分断が世界レベルで加速していると指摘。そして「人間関係」にも大きな変化がもたらされていると説く。はたしてその行き着く先には何があるのか。橘氏に聞いた。

 * * *
 現代を生きる私たちにとって「自分の人生を自由に選択する」という意味でのリベラリズム(自由主義)は当たり前になっています。しかし長大な人類の歴史のなかで、こんな奇妙な価値観が登場したのはせいぜい200~300年前のことです。私たちは、これまでの人類が体験したことのない、個人の「人権」が尊重される「とてつもなくゆたかで平和な社会」に生きているのです。

 一人ひとりが「(人権をもつ)個人」として尊重される社会では、さまざまな利害が対立し、人間関係は複雑化していきます。「人情が薄くなった」と嘆くひとがたくさんいますが、実は逆です。旧石器時代から人類はずっと「知り合いしかいない世界」で暮らしていて、人間関係はものすごくシンプルでした。それが毎日たくさんの「他人」と出会うようになったことで、むしろ昔に比べて「人間関係が濃く(複雑に)なりすぎている」のです。

 ヒトはこのような複雑な人間関係に適応できるよう「進化」していませんから、日々の生活に息苦しさを感じ、疲れてしまうひとが増えて、プライベートくらいは一人になりたいという「ソロ化」が急速に進んでいます。「ソロキャンプ」という言葉が生まれたように、大勢で楽しむイメージが強いキャンプですら最近は一人で行くようです。

「組織(共同体)」をつくるよりも、たまたま合意できた人たちでその場を楽しむ傾向も強まっています。私は、フットサルはメンバーを集めてチームを結成するところから始まるのだと思っていましたが、いまは一人でフットサル場に行って、その場で初めて出会う人たちと即席のチームを組んでプレーするのだそうです。「個人単位の参加」が原則で、「友だちとつるんでくるような奴にはパスを回さない」と聞いたときにはびっくりしました。「イエ制度」の影響が強く残る日本でも、若者のあいだでは個人化・流動化が急速に進んでいるのです。

関連記事

トピックス

中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン
渡邊渚アナのエッセイ連載『ひたむきに咲く』
「世界から『日本は男性の性欲に甘い国』と言われている」 渡邊渚さんが「日本で多発する性的搾取」について思うこと
NEWSポストセブン
 チャリティー上映会に天皇皇后両陛下の長女・愛子さまが出席された(2025年11月27日、撮影/JMPA)
《板垣李光人と同級生トークも》愛子さま、アニメ映画『ペリリュー』上映会に グレーのセットアップでメンズライクコーデで魅せた
NEWSポストセブン
リ・グァンホ容疑者
《拷問動画で主犯格逮捕》“闇バイト”をした韓国の大学生が拷問でショック死「電気ショックや殴打」「全身がアザだらけで真っ黒に」…リ・グァンホ容疑者の“壮絶犯罪手口”
NEWSポストセブン
“ミヤコレ”の愛称で親しまれる都プロにスキャンダル報道(gettyimages)
《顔を伏せて恥ずかしそうに…》“コーチの股間タッチ”報道で謝罪の都玲華(21)、「サバい〜」SNSに投稿していた親密ショット…「両親を悲しませることはできない」原点に立ち返る“親子二人三脚の日々”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
「山健組組長がヒットマンに」「ケーキ片手に発砲」「ラーメン店店主銃撃」公判がまったく進まない“重大事件の現在”《山口組分裂抗争終結後に残された謎》
NEWSポストセブン
ガーリーなファッションに注目が集まっている秋篠宮妃の紀子さま(時事通信フォト)
《ただの女性アナファッションではない》紀子さま「アラ還でもハート柄」の“技あり”ガーリースーツの着こなし、若き日は“ナマズの婚約指輪”のオーダーしたオシャレ上級者
NEWSポストセブン
財務省の「隠された不祥事リスト」を入手(時事通信フォト)
《スクープ公開》財務省「隠された不祥事リスト」入手 過去1年の間にも警察から遺失物を詐取しようとした大阪税関職員、神戸税関の職員はアワビを“密漁”、500万円貸付け受け「利益供与」で処分
週刊ポスト
世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン