いまサラリーマンの社会は、働き方改革で揺れている。経団連会長は終身雇用の継続が難しいと語り、厚生労働省は就業規則のモデルを副業容認型へと修正した。会社が社員の生活を面倒見切れなくなるかわりに副業を認めるというメッセージだ。

 この変化の背景には、権限と責任をイコールと見なす原理原則が反映されているように感じる。仮に会社が社員の生活を一生保証するという“責任”を負う場合、その代わりに会社は社員の副業を一切認めない(つまり束縛する)という“権限”を持つという考え方が成立する。

 逆に会社が社員の生活を一生保証するという責任を放棄すれば、副業を一切認めないという権限も放棄することになる。この原則は会社と社員の関係性を考える上で、フェアなスタンスだと思う。

 これまでの闇営業問題における吉本興業のスタンスは、権限と責任のバランスにおいて、アンフェアに映ってしまう。生活給は保証しない、しかし闇営業も許さない、では力関係のバランスが偏り過ぎている。

 権限と責任の原則から考えれば、芸人に対して生活給の考え方を用いない吉本興業は、生活のために稼ぐ手段を制限する権利も放棄しないとフェアではない。

 もちろん、コンビニバイトなど他の方法で生活費を稼ぐ方法はあるだろうが、稼ぎ方の選択肢は多いほうが良いはずだ。そもそも、人を笑わせるという特技を活かせないというのはあまりに酷ではないか。

 肖像権や著作権、商流の問題などもあると思うが、できる限り“お笑い”という特技を活かして稼げるよう、会社側が環境を整備し、選択肢を用意してあげても良いように思う。

 吉本興業の経営アドバイザリー委員会のブリーフィングでは、3つの契約スタイルの案が提示された。

(1)共同確認書のみ
(2)共同確認書+専属マネジメント
(3)共同確認書+専属エージェント

 直営業については認める方向のようだが、営業先の情報を吉本興業に報告するよう提言されている。

 報告は芸人を守るためでもあるという考え方もわかるが、吉本興業への報告が何らかの縛りになる可能性も否定はできない。今後の議論を進める中で、権限と責任のバランスをどうとっていくかという観点も必要ではないか。

 副業を希望するサラリーマンにとって、今回の吉本興業の騒動は決して対岸の火事ではない。勤めている会社との関係性や個人業務委託で働く場合に気をつけるべきことなど、参考になることが多い。単なる芸能ニュースという認識から一歩踏み込んで、今後の推移を見守ってみてはどうかと思う。

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