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「ドローン保険」のニーズ高まる 事故責任を負うのは誰か

さまざまな用途で急速に普及するドローン

さまざまな用途で急速に普及するドローン

 近年、小型無人機ドローンのニーズが高まり、活用範囲が広がっている。損害保険会社では思わぬ事故に備える「ドローン保険」の開発も進めているが、その補償内容には課題も多いという。ニッセイ基礎研究所上席研究員の篠原拓也氏が、ドローン保険の現状と今後の見通しについてレポートする。

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 いま、新時代の科学技術の1つとして、ドローンへの注目度が高まっている。娯楽用のドローンは、以前から愛好家に利用されていたが、現在は農業での農薬散布や生育状況の確認、土木管理での構造物点検、インフラ整備での航空測量など、多くの分野で商業用のドローンの活用範囲が広がっている。

 今年に入ってからも、例えば品川区(東京都)は4月に、災害時に被害状況の調査や被災者の誘導などにドローンを活用する協定を民間企業と交わした。また、横須賀市のスーパーマーケットでは、7月からドローンによる商品の配送サービスを始めている。

 このようにドローンの活用範囲が広がると、いつ大きな事故が発生してもおかしくない。もちろん、法規制の整備は進められているが、損害保険分野ではドローン運用に伴うリスクをカバーする「ドローン保険」が販売されている。この保険について、少し見ていこう。

◆ドローンにもいろいろな種類がある

 ドローンは、無人で遠隔操作や自動制御によって飛行する航空機の総称だ。まず、現在普及しているドローンの種類を、簡単に見てみる。

 現在主流なのは、3枚以上の回転翼(プロペラ)を持つマルチコプター。揚力を生むメインローターが複数あるため、「マルチローター」と呼ばれる。プロペラの枚数は3枚、4枚、6枚、8枚のものがある。プロペラが増えるほど飛行の安定性が増すが、プロペラの回転に必要なモーターも増えるため、機体の重量が増加する。マルチコプターは、コンパクトで操作しやすく、価格は比較的安価とされる。

 一方、回転翼機には、ヘリコプターのドローンもある。揚力を生むメインローターが1つのため、「シングルローター」と呼ばれる。メインローターによって機体にかかる回転を打ち消すためにテイルローターがあり、プロペラを2つ持つ。マルチローターよりも航続時間が長いという特徴がある。

 これらとは別に、飛行機のような固定翼を持つドローンもある。回転翼機に比べて動作部品が少ないため、耐久性が高いうえに巡航速度が大きい。固定翼機の多くは水平に離陸するため、飛行の際に、ある程度開かれた空間が必要となる。操作性が低いことや、高額なものが多いことが難点とされる。

◆急激に拡大するドローン市場と用途

 つぎに、ドローンの市場や用途を見てみよう。これまでドローンの市場は急激に拡大しており、これからも拡大傾向は続くと予想されている。

 総務省の資料によると、日本の商業用ドローンの市場規模は2015年の16億円から、2020年に186億円、2022年に406億円へと急増すると予想されている。2015年の用途は農薬散布が約70%だが、今後は点検や測量などで拡大が見込まれる。

ドローンの用途は多岐にわたってきた

ドローンの用途は多岐にわたってきた

 一方、アメリカの商業用ドローンの販売数は、2015年に4万ユニット弱。2017年に11万、2025年に16万ユニットに増加するとみられる。

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