国内

Nスペの「半グレ特集」が組織の宣伝拡散に利用されている皮肉

夜の街で過ごす姿が虚飾ではなくカッコよく感じた若者も

夜の街で過ごす姿を羨望の眼差しで見つめる若者も

 新聞やテレビ、雑誌などで反社会勢力についてとりあげる場合、事実を報じるだけでなく、その勢力がいかに理不尽な存在であるのかも同時に伝える必要がある。だが、テレビのように視聴者の記憶に強く残る場面が全体の印象を決定づけやすいメディアの場合、制作者側の意図とは正反対の結果を生み出してしまうことがある。NHKスペシャル『半グレ 反社会勢力の実像』の放送後にあらわれた、皮肉な反響についてライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
「NHK見たですか?よかったですねー。ああいう取材、俺たちにもやってくれんですか?顔出しできる奴も準備しますよ」

 数ヶ月ぶりに筆者に電話をかけてきたのは、福岡県内で飲食店を経営する男性・K(30代)。Kとは数年前に、とあるファッション雑誌の取材で知り合ったが、当時は九州に本部を置く指定暴力団傘下の現役組員だった。その後、組を抜け…というよりは「偽装破門」されて「カタギ(一般人)」として様々な事業を行なっている、と自称する。

 Kがいう「NHK」とは、7月27日に放送されたNHKスペシャル『半グレ 反社会勢力の実像』という番組だ。いわゆる「半グレ」とされる保釈中の男性らへの密着取材、女子大生に酒を飲ませて法外な飲食代を請求した上で脅し、風俗で無理やり働かせたという男性のインタビュー、元祖半グレ集団創設者までが登場し、大きな話題となった。

 特筆すべきは、大阪・ミナミの顔として登場した二人の男性が、顔出し、実名で取材に応じたことだった。一人は大阪で人気の地下格闘技団体のスターだったが、傷害事件などで逮捕された。その後も、診療報酬詐欺に関与したとして逮捕され、取材時は「保釈中」の身。もう一人も過去に傷害事件などを起こしているが、インスタグラムを毎日のように更新し、高級ブランド品で固めた自身のコーデや毎晩飲み歩く派手な姿を投稿し続ける…「今風」で、不良漫画から飛び出してきたようなアウトローといった印象を視聴者はもったはずだ。

 もっとも、大多数の視聴者は、全く悪びれることのない二人について「とんでもない奴だ」「怖い連中だ」と思ったに違いないだろうが、若者の中のごく一部は、件の放送を見て「反グレに対する憧れ」を抱いたのだという。前述のK氏が説明する。

「あげな(あんな)放送したら、半グレはかっこよかってなるに決まっとるでしょう。羨ましかです、彼らの周りには放送を見た若者がたくさん寄ってくるでしょう。確かに普通の人が見たら“怖い連中”かもしれんですけど、若者からみたら、多少、得体の知れんくらいの方が、憧れも抱きやすかわけでしょ。ほとんど宣伝ですよ、彼らの」

 Kが過去に面倒を見ていたという元部下も、SNSを使って自身の派手なライフスタイルをアピールしている。インスタを覗いてみると、高級焼肉店で美女と食事する動画、アウディやBMWなどの高級車を乗り回し、札束の写真には「本気で稼ぎたい奴募集」などと言った文言も載せられていた。

関連記事

トピックス

麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン
左から広陵高校の34歳新監督・松本氏と新部長・瀧口氏
《広陵高校・暴力問題》謹慎処分のコーチに加え「残りのコーチ2人も退任」していた 中井監督、部長も退任で野球経験のある指導者は「34歳新監督のみ」 160人の部員を指導できるのか
NEWSポストセブン
松本智津夫・元死刑囚(時事通信フォト)
【オウム後継「アレフ」全国に30の拠点が…】松本智津夫・元死刑囚「二男音声」で話題 公安が警戒する「オウム真理教の施設」 関東だけで10以上が存在
NEWSポストセブン
二刀流復帰は家族のサポートなしにはあり得なかった(getty image/共同通信)
《プールサイドで日向ぼっこ…真美子さんとの幸せ時間》大谷翔平を支える“お店クオリティの料理” 二刀流復帰後に変化した家事の比重…屋外テラスで過ごすLAの夏
NEWSポストセブン
9月1日、定例議会で不信任案が議決された(共同通信)
「まあね、ソーラーだけじゃなく色々あるんですよ…」敵だらけの田久保・伊東市長の支援者らが匂わせる“反撃の一手”《”10年恋人“が意味深発言》
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《デートではお揃い服》お泊まり報道の永瀬廉と浜辺美波、「24時間テレビ」放送中に配慮が見られた“チャリT”のカラー問題
NEWSポストセブン
8月に離婚を発表した加藤ローサとサッカー元日本代表の松井大輔さん
《“夫がアスリート”夫婦の明暗》日に日に高まる離婚発表・加藤ローサへの支持 “田中将大&里田まい”“長友佑都&平愛梨”など安泰組の秘訣は「妻の明るさ」 
女性セブン
経済同友会の定例会見でサプリ購入を巡り警察の捜査を受けたことに関し、頭を下げる同会の新浪剛史代表幹事。9月3日(時事通信フォト)
《苦しい弁明》“違法薬物疑惑”のサントリー元会長・新浪剛史氏 臨床心理士が注目した会見での表情と“権威バイアス”
NEWSポストセブン
海外のアダルトサイトを通じてわいせつな行為をしているところを生配信したとして男女4人が逮捕された(海外サイトの公式サイトより)
《公然わいせつ容疑で男女4人逮捕》100人超える女性が在籍、“丸出し”配信を「黙認」した社長は高級マンションに会社登記を移して
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン