被害的認知とは、相手の様々な行動や反応、発言に対し、悪意を持って解釈する、攻撃や非難と捉える、敵意がある、裏があると感じるという「認知の歪み」である。背景には不安やコンプレックス、コントロールしたいのにできないという感覚や苛立ちがあるといわれる。韓国経済の先行きや、北朝鮮との関係など文大統領の不安は尽きないし、演説で「日本を追い越す」と口にしたのも日本への複雑な思いがあったからだろう。
また、もともと文大統領は反日姿勢を強く打ち出していただけに、日本に対する被害的認知は政権の中にも生じていたと思う。そのため彼が大統領になってから、韓国の反日姿勢は一層強くなった。韓国海軍艦艇が日本の海上自衛隊機に火器管制レーダーを照射したり、慰安婦問題では韓国国会議長が天皇への謝罪を要求するなどだ。日本が対応してもしなくても韓国は納得しない。そして起きたのが徴用工問題だ。両国間で解決済みのはずが、韓国大法院は日本企業に賠償を命じる判決を下し、日本企業の資産差し押さえを認め、既に差し押さえられている。
日本は輸出管理を強化し、輸出手続きを優遇する「ホワイト国」から韓国を外した。文大統領は、「事実上の対抗措置」だと日本を非難し大騒ぎになった。日本なりの言い分など意味をなさず、かえって文政権の被害的認知を強くし、自らを正当化して攻撃できるきっかけを与えてしまったのだ。
さらに日本は、彼らの被害的認知を後押ししてしまう。経産省で行われた輸出管理に関する事務的説明会だ。韓国産業資源部当局者と経産省関係者による会議は、小さな事務室で、ホワイトボードに事務的説明会と印字した紙が貼られただけのもの。だが、韓国側はスーツにネクタイをしていたのに対し、日本側はノーネクタイ。状況が状況だけに、韓国側は日本に「軽んじられた」と捉えてしまった。
こうした流れが続いたことで、日本の静観は自分たちへの「否定と無視」と結論づけられた。その上、文政権になってから反日姿勢はより強行で攻撃性が増している。被害的認知がある上に攻撃性が加わったことで、ことさら相手の行動や反応を悪意として解釈し攻撃し始めたのだ。GISOMIA破棄の裏にも、文政権の被害的認知という認知の歪みが関係していたのだろう。
過去最悪と言われる日韓関係は、いったいどこに向かうのだろうか。