日韓基本条約に調印する李東元韓国外相(左)と椎名悦三郎外相。1965年(共同通信社)

 現在の韓国に強硬姿勢を続ける安倍晋三・首相と河野太郎・外相だが、歴史を遡れば戦後の日韓の国交樹立は、彼らの祖父の功績だった。「昭和の妖怪」の異名をとる岸信介・元首相と、「竹島密約」の当事者とされる河野一郎・元副総理である。

 戦後の日韓国交交渉(予備会談)は、朝鮮戦争さなかの1951年に米国の斡旋で始まる。だが、佐藤栄作内閣で日韓基本条約が締結(1965年)に辿り着くまでに、日韓双方の主張は激しく対立し、何度も中断された経緯がある。

 それを大きく前進させたのが「アジア積極外交」を掲げて首相に就任した岸氏だった。日韓の裏面史に詳しい菅沼光弘・元公安調査庁第二部長が指摘する。

「戦後の日韓交渉は、岸氏や安倍首相の地元の山口県と深い関係がある。韓国の李承晩政権は、日本海で操業する漁船を次々に拿捕し、山口県在住者を多く含む日本人船員が韓国に抑留された。彼らを帰国させるためにも、岸氏は韓国との外交関係を急いで築かなければならなかった背景がある」

 拿捕された漁船は最終的に327隻、抑留船員は3911人にのぼった。

 首相兼外相の岸氏は、戦前に日本が韓国に残していた資産の補償を求める請求権の主張を撤回。また、日本で罪を犯して強制退去処分を受けた韓国人を送還せずに日本に残ることを認めるなど、韓国に大幅譲歩する内容の日韓共同コミュニケ(1957年12月)を発表し、国交交渉の再開に道筋をつけた。

 背景には、朝鮮戦争の休戦(1953年)後、共産主義の防波堤となっている韓国と日本との関係回復を求める米国の要請があったとされる。岸氏は首相退陣後も日韓外交に深く関わり続けた。

関連記事

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン