後付けの伝説ながら、これに着目したのが革命家の孫文だった。武装蜂起に際しての武力として三合会に目をつけたわけで、広州で医学を学んでいたときの学友・鄭士良(ていしりょう)がたまたま三合会の幹部であったことから、両者の提携はうまく運んだ。孫文が十数回にわたり繰り返した武装蜂起の前半は、もっぱら三合会の組織力と武力を頼りにしていた。
後半になると、孫文は海外留学の経験を持ち、西洋式訓練を受け、西洋式装備で身を固めた清の新たな国防軍(新建陸軍=新軍)の幹部候補生たちを勧誘して革命戦力の主軸としたが、三合会との協力関係は変わらなかった。
辛亥革命により当初の目的を達成して以降、三合会幹部の中には軍閥化する者もいたが、それ以外の多くは裏社会を仕切る役割に戻り、今日に至るのだった。
ちなみに、小学館から刊行中のコミック『ブラック・ラグーン』には香港三合会のタイ支部が登場するが、現実世界でも三合会の組織網は華僑・華人の多く居住する東南アジア全域に広がっており、インターポール(国際刑事警察機構)からも目をつけられている。
【プロフィール】しまざき・すすむ/1963年、東京生まれ。歴史作家。立教大学文学部史学科卒。旅行代理店勤務、歴史雑誌の編集を経て現在は作家として活動している。著書に『ざんねんな日本史』(小学館新書)、『いっきにわかる! 世界史のミカタ』(辰巳出版)、『いっきに読める史記』(PHPエディターズ・グループ)など多数。