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2019.09.19 16:50  週刊ポスト

【川本三郎氏書評】90歳を迎える仏文学者が綴る悠然枯淡

 詩人についての文章も多い。京都の笛師で詩人、福田泰彦の、癌で逝った奥さんを詠んだ詩「嘘」が紹介されている。末期癌だったのに「もうすぐ良くなる」と嘘を言い続けた。いま「日に一度哭くことにしている。/二度哭くと健康を保てないので。/三度哭くと自殺することになるので」。いい随筆には必ずいい引用がある。氏は映画好き。往年の二枚目、岡田時彦を評して「ドラキュラ役にふさわしい」とは唸る。

 氏はまた酒好きでもある。これについてもいい話がある。大学時代に英語を習った深瀬基寛は酒好きだった。七十歳で持病の肺結核が悪化した。その日の夕刻、ウイスキーをグラス一杯飲み、夜、眠るように逝ったという。

※週刊ポスト2019年9月20・27日号

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