──僕も童貞時代は深夜のファミレスでそういった“不毛な議論”をしていました。濱崎さんがプロデュースする番組には部室で話す不毛なトークに似た魅力があります。
濱崎:部室トークって変わり映えしない日常がネタじゃないですか。現状維持している“その時”が楽しいんです。そして、停滞した状態が変わっていく瞬間にもグッとくる。
僕の曽祖父も、祖父も、父親も教師でした。ゆえに、幼い頃は自分も将来は教師になるものだと漠然と考えていました。だからなのか、つい先生的な目線で出演者を見てしまう。まだ何者でもない人を応援したい気持ちが強いんです。番組を通して出演者が「なりたい自分」へと成長していくのが制作者として一番の喜びなんですよね。
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インタビューを終えて、最初に持った感想は「濱崎さんって優しい……」だった。番組と出演者に対して暖かな視線を持ち、自分の制作物への愛情が深い。そして、なによりも出演者の成長に喜びを見出す人であった。
また『ブステレビ』『DTテレビ』共に、濱崎さんの思考が想像以上に反映されていたことにも驚く。たとえば「濱崎さんの心の中の童貞が拒否した」なんてことを理由に番組企画が少し変わったこともあるという。そんなエピソードを聞き、濱崎さん自身の人生観が番組内で密かに綴られていたことを知る。今後も優しく私的な番組を僕は愛でていこうと思った。
●はまさき けんいち/株式会社AbemaTVプロデューサー。2003年、テレビ朝日入社。『いきなり!黄金伝説。』『そうだったのか!池上彰の学べるニュース』など様々な人気バラエティ番組を担当。2016年よりAbemaTVの制作部門へ異動、『恋する週末ホームステイ』『Popteenカバーガール戦争』『さよならプロポーズ』『おぎやはぎの「ブス」テレビ』、『指原莉乃&ブラマヨの恋するサイテー男総選挙』『DTテレビ』など数々のオリジナル番組を企画し、プロデューサーを務める。
●ヨシムラヒロム/1986年生まれ、東京出身。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。イラストレーター、コラムニスト、中野区観光大使。五反田のコワーキングスペースpaoで週一回開かれるイベント「微学校」の校長としても活動中。テレビっ子として育ち、ネットテレビっ子に成長に成長した。著書に『美大生図鑑』(飛鳥新社)。