スポーツ

ラグビー普及のきっかけ生んだ「英国版スクール・ウォーズ」

W杯初戦でロシアを撃破した日本代表(AFP=時事)

 フェアプレイを重んじる紳士のスポーツ──英国発祥のラグビーは、肉体同士をぶつけ合う荒々しい競技ながら、他者への礼儀や公平さなど、その精神性をこそ重視している。そうした特徴は、英国エリート私立校でラグビーが必修化された経緯に秘密があった。歴史作家の島崎晋氏が解説する。

 * * *
 ラグビーのワールドカップが開幕した。日本での開催は今回が初めて。野球やサッカーに比べると、普及度や認知度の点で大きく劣るが、今大会を機会に大きな変化が起こることを期待したい。

 ところで、ラグビーの本場である英国のエリート私立校ではラグビーが必修ということをご存知だろうか。そうなった背景には意外な事実が秘められていた。

 英国のエリート私立校はインデペンデント・スクールと呼ばれ、俗称をパブリック・スクールという。公立学校を思わせる名称だが、これは私塾や個人の家での教育と差別化するためつけられたもので、公立ではなく私立で、なおかつ全寮制を原則とした。

 教会付属の無償の学校は6世紀から存在したが、脱宗教化の流れが表われ出した15世紀から有償の私立学校が増え始めた。当初は貴族の子息のみを対象としたが、中流階級が増えるに伴い、そのなかの上流層をも受け入れるようになった。

 エリート私立校と聞けば、規律正しいイメージが浮かぶだろうが、ある時期までのパブリック・スクールは無秩序かつイジメと暴力のるつぼだった。生徒らによる暴動がひどいときには教員だけではどうにもならないので、それを鎮圧するため義勇軍の応援を仰いだことさえあった。 

 学級崩壊どころではなかったわけだが、そうなった理由の一つとして、生徒が上流階級の子息であったのに対し、校長をはじめ教員すべてが中流階級の出身で、生徒から見下されていたことが挙げられる。そのために言うことを聞かない生徒に対する教員の体罰も過剰になりがちで、上級生が下級生を奴隷のごとくこき使う「ファギング」という悪習も蔓延していた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

6月6日から公開されている映画『国宝』(インスタグラムより)
【吉沢亮の演技が絶賛】歌舞伎映画『国宝』はなぜ東宝の配給なのか 松竹は「回答する立場にはございません」としつつ、「盛況となりますよう期待しております」と異例の回答
NEWSポストセブン
さいたま市大宮区のマンション内で人骨が見つかった
《さいたま市頭蓋骨殺人》「マンションに警官や鑑識が出入りして…」頭蓋骨7年間保管の齋藤純容疑者の自宅で起きた“ある異変”「遺体を捨てたゴミ捨て場はすごく目立つ場所」
NEWSポストセブン
大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
フランスが誇る国民的俳優だったジェラール・ドパルデュー被告(EPA=時事)
「おい、俺の大きな日傘に触ってみろ」仏・国民的俳優ジェラール・ドパルデュー被告の“卑猥な言葉、痴漢、強姦…”を女性20人以上が告発《裁判で禁錮1年6か月の判決》
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン