国内

小泉環境相への「ステーキ批判」はちっともセクシーじゃない

米ニューヨークの国連本部で開かれた都市の脱炭素化に関するイベントで演説する小泉進次郎環境相

 メディアだからといって闇雲に批判すればいいというわけではない。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が指摘する。

 * * *
 改造安倍内閣で環境大臣に就任した小泉進次郎氏が、ずいぶんとやり玉に上げられている。その理由が「環境分野で国を背負っている」はずなのに、「環境負荷の高い牛肉のステーキを食べるとは問題だ」という論評だ。

 確かに牛は環境への負荷が大きい動物とされている。アメリカのバード大学、エール大学などが2014年に牛肉や乳製品、卵、鶏肉、豚肉の生産に伴う環境負荷を算出した。牛と他の動物などを比較したところ、同量のタンパク質を得るのに必要な土地は約28倍、用水量11倍、飼育過程で排出される温室効果ガス5倍などなど……。牛という畜産動物は環境負荷が高いという研究結果は確かに出ている。

 だが冒頭の小泉大臣についての報道を額面通りに受け取るわけにもいかない。そこに行き着くまで、煽り記事のバイアスがそこかしこに入っているからだ。最初に強めにバッシング記事を配信したのは9月23日午前の『リテラ』だった。同Webはいわゆるリベラルというか「左寄り」のネットメディアで、記事の切り口に偏りがあることで定評がある。偏食ならぬ、偏向と言ってもいいスタイルだ。

 さて、肝心の見出しは〈小泉進次郎「ステーキ食べたい」が環境相失格な理由 温暖化対策で「ミートレス運動」の最中に無知を露呈 海外メディアもツッコミ〉というもの。パッと見、海外では温暖化対策由来のミートレス運動が盛り上がっていて、ステーキを食べたことに対して海外メディアからもツッコミが入っていると読めそうな見出しだ。しかし実情は違う。

 記事の冒頭で〈地球温暖化対策を議論する「国連気候行動サミット」に出席する環境大臣がステーキを食すというのは、はっきり言って正気の沙汰ではない〉と強いボールを投げているのはまだいい。記事中にある〈2013年には国連食糧農業機関が温室効果ガスの14.5%が畜産業に由来していると公表〉したのも事実である。

 だが、〈温暖化対策で「ミートレス運動」の最中〉あたりからどうにも怪しい。今年からニューヨーク市では小学校の給食で週に一度「ミートレスマンデー」を実施しているが、最大の理由は市民の健康問題だ。今年3月にこのニュースを扱ったAFPの記事は以下のように結んでいる。

〈ニューヨーク市スタテンアイランド(Staten Island)地区のジェイムズ・オッド(James Oddo)区長は、「この考えをあざ笑う人々にシンプルな助言をしたい。科学を見よ。データを見よ。子どもの肥満や前糖尿病の診断結果を見よ。米国の12歳から14歳の子どもたちのうち65%が若年性のコレステロールの病気の兆候を示している事実を見よ」と指摘した〉(2019年3月12日付AFPBB)

 海外で展開されている「ミートレス運動」は健康問題由来のものが多い。温室効果ガス問題はその運動を後押しする要素のひとつに過ぎず、前出の記事でも温室効果ガス問題への言及は一箇所しかされていない。〈デブラシオ市長は、「肉の消費を少しでも減らすことはニューヨークに住む人々の健康改善につながり、温室効果ガスの排出量削減にもなる」と訴えた〉という部分だけである。

関連キーワード

関連記事

トピックス

割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン