国内

芸術に公金は必要か 舛添要一氏「不自由展」再開で持論

「表現の不自由展・その後」に展示された彫刻家キム・ソギョン氏、キム・ウンソン氏夫妻の「平和の少女像」(時事通信フォト)

「あいちトリエンナーレ2019」で中止された企画展「表現の不自由展・その後」について、企画展実行委と絵技術再実行委が中止前までの状態での再開を目指すことで合意した。国家と芸術の関係を揺るがした「不自由展」騒動について、『ヒトラーの正体』を上梓した舛添要一氏が持論を述べる。

 * * *
 気に入らない芸術展を脅迫などの手段で中止に追い込むのは、基本的人権・民主主義の破壊です。再開が決まった「不自由展」については、まだまだ予断を許さない状況ですし、残された時間も少ないでしょうが、万難を排して再開してほしいと切に願います。

 同件については、文化庁からの補助金の全額(約7800万円)を交付しないと、萩生田光一文部科学相が発表しています。いったん採択が決まった補助金を「不交付」とするのは、国の驕りとしか思えません。文化庁は、手続き上の問題などを挙げていますが、「少女像が展示されたのはけしからん」というのが本音だと思います。

 国家の都合で芸術祭の内容を変更できてしまうのなら、逆に韓国のように政権交代が起こったら、逆のことが起きる可能性もあります。だから政治家や権力者は芸術の中身について絶対に文句を言ってはいけません。そのことを分かっているからこそ、中身ではなく、手続きを理由にしたのだろうし、本当に手続きが理由なら、全部ではなく、該当する部分のカットでいいと思います。

 国家が芸術をコントロールできると思ったら大間違いです。私が思い出したのは、ナチスの芸術政策です。ヒトラーはもともと画家を目指していただけあって、芸術には大いに関心があります。それどころか、芸術を支配下に置こうと考えていました。

 1933年に政権をとったナチスは ボルシェヴィキ、マルクス主義者、ユダヤ人作家の作品を槍玉に挙げました。また、キュビズム(代表的画家にピカソやブラックなど)、フォーヴィスム(マチスやルオーなど)、抽象主義、印象派なども、芸術の名に値しないと烙印を押します。

 ヒトラーは、伝統的な写実主義やロマン主義の宗教画や風景画を愛しました。健康美あふれるドイツ人がしっかりと家庭で健全な生活を送っているような絵も好みです。一方で、男女が接吻していたりするようなエロティックな作品などを退廃芸術とよんで、毛嫌いしました。

関連キーワード

関連記事

トピックス

俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
ラオスに滞在中の天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《ラオスの民族衣装も》愛子さま、動きやすいパンツスタイルでご視察 現地に寄り添うお気持ちあふれるコーデ
NEWSポストセブン
AIの技術で遭遇リスクを可視化する「クマ遭遇AI予測マップ」
AIを活用し遭遇リスクを可視化した「クマ遭遇AI予測マップ」から見えてくるもの 遭遇確率が高いのは「山と川に挟まれた住宅周辺」、“過疎化”も重要なキーワードに
週刊ポスト
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト