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高野連が「球数制限」導入へ、もし松坂大輔の時代なら…

 昭和の怪物が江川なら、平成の怪物は松坂大輔(現・中日)だろう。1998年夏の甲子園において、決勝の先発マウンドに上がった横浜(神奈川)のエース・松坂は、ノーヒットノーランの快挙とともに、同校史上初めて春夏連覇を達成した。この大会で松坂が投じた球数は、782球にのぼった。

 日本高野連が新たに導入する方針の「1週間で500球以内」「3連投禁止」を当時に当てはめるとどうなるか。この大会の日程と松坂の投じた球数は以下のようなものだった。

■1998年 第80回全国高等学校野球選手権大会
8月11日(1回戦)対柳ヶ浦(大分)/139球
8月16日(2回戦)対鹿児島実業(鹿児島)/108球
8月19日(3回戦)対星稜(石川)/148球
8月20日(準々決勝)対PL学園(大阪)/250球
8月21日(準決勝)対明徳義塾(高知)/15球
8月22日(決勝)対京都成章(京都)/122球

 休養日がなく、もっとも投手に負担の大きかった時代と言えるだろう。今夏の甲子園から、準々決勝の翌日に加え、準決勝の翌日にも休養日が設けられるようになったが、1998年夏の松坂は3回戦から決勝まで4連投だった。当時と現在では、そうした甲子園のスケジュールに違いがあるので、単純に比較はできないものの、この大会の松坂に対して「1週間(7日間)で500球」というルールを“適用”してみる。

 計算していくと、松坂は2回戦の鹿児島実業戦から準々決勝のPL学園戦までの「5日間で506球」を投じている。新ルールの細部はこれから決められていくが、もし「1週間で500球に達した時点で降板」という規定が採用されるなら、PL学園戦の延長17回裏という、まさに大詰めの場面で、マウンドを降りなくてはならなかったことになる。そして、翌日の準決勝、翌々日の決勝では1球も投げてはいけないのだ。明徳義塾戦の9回表にリリーフ登板して逆転サヨナラ劇を呼び込んだ名場面も、京都成章戦の圧巻の“決勝ノーノー”も生まれなかったことになる。

 こうして見ると、改めて松坂がいかに過酷な状況で登板していたかがわかる。やはり球史に残る怪物だったのだ。

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