芸能

『スカーレット』の戸田恵梨香 熱演が浮き彫りにする綻び

番組公式HPより

 ドラマの評価は、脚本・演出・芝居の精度で決まる。すべてが高次元で組み合わされるのが理想だ。ドラマウオッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が期待の朝ドラについて分析した。

 * * *
 NHK朝ドラ『スカーレット』が始まりました。第1週~2週目は子役中心の構成だったため、ジリジリさせられた視聴者も多かったかも。10月10日、いよいよ喜美子役・戸田恵梨香の姿が画面に現れ、「いよっ待ってました!」と喝采が聞こえるようでした。

 31才の女優が、セーラー服にモンペ姿の15才として現れた瞬間は、正直ちょっと無理があるかも、という思いがよぎったのです。しかし、パンっと跳ねるような若々しさで「わーい!」と声をあげながら自転車で疾走する戸田さんの姿を見て、納得。役作りへの意欲、躍動感が伝わってきたからです。「15才ね、わかった」と説得されたような勢いを感じました。そうなればもう実年齢なんて関係ない。

 そして、喜美子の幼なじみ・照子を演じる大島優子さんも輝いていました。喜美子と照子、二人のからみのシーンは息があっていて楽しい。柔道の技をかけ取っ組み合うシーンなんか、エネルギーがほと走っていました。

 それに同級生・信作を演じる林遣都、母のマツの富田靖子、父・常治の北村一輝……安定感のある役者が配置されていて好感。ということで、まずは「信楽編」の役者たちにほっとしたのです。しかしそれも、つかの間でした。

 信楽で仕事を得ることができなかった15才の喜美子が、大阪へと移動したそのとたん。31才の戸田さんが、ちらりちらりと垣間見えるようになったからです。

 女中の仕事につくはずの喜美子がクビを言い渡され、あらためて「女中として働かせて下さい」と嘆願するシーン。もし、小娘が大ベテランの女中・大久保のぶ子(三林京子)から、クビを言い渡されたら?

 ひれ伏して「どうしてもここに置いてください」「実家は貧しいので帰れません」「どうかお願いします」と泣いて頼むのが関の山でしょう。ところがどっこい、社会経験もない15才の子供が、白髪の大先輩相手に理屈をこねるこねる。

「柔道なら、大久保さんはわたしの対戦相手です」と、まずは挑発的に話をふってみせた。

 そして、「大久保さんは、お子さんを4人育てられて、厳しい姑さんを看取ってこられたんですよね? すごい事やと思います。でも大久保さん、『家の仕事は誰にでもできる』って言いましたが、そやろか?」と、前提に対して疑問符を付けてみせる展開。まるで安手のプレゼンテーションのよう。

 これが田舎から出てきたばかりの見習い?  ありえない。こんな「話の持って行き方」、子供にはできない。そしてオチはヨイショときました。

「大久保さんのご飯いただきました。おいしかったです。大久保さんやから作れたご飯やと思います。うち、家事は誰にでもできる仕事だとは思いません。いつか、『あんたにしかできん。参りました!』と言わせてみたい。そう思いました。どうか雇ってください。戦わせてください。お願いします!」

 いろいろな人に接して社会で苦労し世の中の成り立ちもわかり、口先も立つようにならなければできないような大演説ぶりです。

関連記事

トピックス

球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁/時事通信)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン