さらに味の素「鍋キューブ」では、パーカを羽織った田中圭が「濃厚白湯」「うま辛キムチ」を手に「うわ、どっちだ。迷うなコレ」と言いつつ、両方をフーフーパクパクして「ダブルうめ~!」と叫んでいる。
これらのCMを観てつくづく感じるのは、「日本人は誰かが美味しく食べる姿を観るのが好き」ということだ。日本のテレビは、とにかく何かを食べている場面が多い。ドラマでは登場人物の食事シーンが欠かせないし、情報番組やお散歩番組では各地名物のグルメを紹介、夕方のニュースでもデパ地下の裏側やらB級グルメなどを特集する。
食レポという言葉もすっかり定着した。これほど食の場面が増えた理由は、殺伐した話も多い中で、「美味しい」というもっとも身近で共感を呼ぶ幸せをテレビに映し出せるからだろう。
商品のイメージアップと購買に直結するCMでは、その幸せな顔をいい男たちが見せる。解放感のある夏はアイスのCMなどでアイドルも走り回るが、冬場に自宅でじっくり味わうあったか料理CMは、おとな世代が担当する。家族や仲間がいるのもポイントだ。愛され男たちが「うめ~」と喜んだり、「ハイ、食べてみて」と鍋を差し出す姿を観る季節。令和最初の冬は、そんなイメージになったのである。