国内

「城山ダム緊急放流」舞台裏 担当者が振り返る緊迫の1日

台風19号は東日本各地に甚大な被害をもたらした。写真は千曲川の氾濫により水没した北陸新幹線(時事通信フォト)

 日本の自然災害は新たな時代に突入したのかもしれない。10月6日にマリアナ諸島で発生した台風19号(アジア名:ハギビス)は、12日夕方に関東を直撃。暴風域となった東日本全域で甚大な被害が起きた。ここまで多くの河川の氾濫をもたらした例は過去にない。

 これまでに71河川の決壊が確認されており、90名以上の死者・行方不明者がいることが分かっている。被害の全容はまだはっきりせず、その後も続く降雨の影響もあり、災害はまだ継続中といえる。

 12日の上陸前、関東に刻一刻と近づいてくることを伝える台風情報が、より一層の緊迫感を持って伝えたのが、昼過ぎに報じられた「城山ダムの緊急放流」だった。城山ダムは、神奈川県北西部に位置するダムで、城山ダム湖はレジャーを楽しむ観光客からは津久井湖として知られている。

 相模川上流にある城山ダムは、周囲の山地に降った雨を受け止める「治水」と、工業用水や生活用水のための「利水」に加え、「発電」も行う多目的ダムである。このダムが建設された目的は、戦後の相模川流域の急激な人口増加にあった。現在、相模川流域には8市町128万人が暮らす。ニュースがより緊迫感を持って伝えたのも当然だった。

 神奈川県の河川の治水管理を担う県土整備局河川課では、膨大な量の降雨があることを見込んで、10日の時点で各市町に「緊急放流の可能性がある」と電話連絡を行っていた。さらに11日には予備放流を行い、ダム水位を「雨がそれほど降らなかった場合でも渇水しないレベル」にまで下げていた。

 明けて12日、台風は予報どおりの進路を取っていた。自宅待機していた河川課副課長の田所孝雄氏は、テレビのニュース速報で「午後5時から緊急放流」を知った。ほどなくして参集の指示が入り、すぐにタクシーで関内にある県庁舎に向かったが、途中、気分は陰鬱だったという。

「緊急放流を聞いたときは、『本当にやるのか』と。実施すれば、流域の広範囲で決壊をもたらす可能性が高い。去年の西日本豪雨での浸水被害の光景が脳裏にまざまざと再現されました」(田所氏)

 2018年7月の西日本豪雨では、愛媛県を流れる肱川(ひじかわ)の流域で2つのダムの緊急放流を行った結果、3000棟以上の浸水被害、死者8名を出す惨事となった。河川課内でも、11日からどんよりした空気が流れ、みな口数が少なくなっていったという。

関連キーワード

関連記事

トピックス

林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
「パー子さんがいきなりドアをドンドンと…」“命からがら逃げてきた”林家ペー&パー子夫妻の隣人が明かす“緊迫の火災現場”「パー子さんはペーさんと救急車で運ばれた」
NEWSポストセブン
豊昇龍
5連勝した豊昇龍の横綱土俵入りに異変 三つ揃いの化粧まわしで太刀持ち・平戸海だけ揃っていなかった 「ゲン担ぎの世界だけにその日の結果が心配だった」と関係者
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン