東京五輪で当初予定されていたのは、皇居外苑の内堀通りに設定された周回コース。皇居を背景にしたテレビ映えする競技中継映像が期待される一方、日陰がほとんどない悪条件に対して選手からは「可能であれば再考してほしい」(鈴木)との指摘が出ていたのは事実だ。とはいえ、東京の8月の平均最高気温はドーハとさほど変わらないレベル。日本競歩勢はドーハを“仮想東京”に見立てて対策を練り、結果を残したのだ。平均気温で約6度も低い札幌開催では環境がまるで変わり、当然、ドーハで力を発揮できなかった諸外国勢にとって有利に働く可能性がある。
10月30日からのIOCの調整委員会で、東京都はマラソンのスタート時刻をさらに繰り上げる、競歩についても日陰の多いルートに変更するといった案を提案し、「東京開催」を目指すものと報じられており、最終的な開催地がどこになるかはまだ流動的だ。10月25日、IOCのジョン・コーツ調整委員長と会談した際、小池百合子都知事は「東京で行っていく気持ちに変わりはない」と抗ったが、コーツ氏は「IOCはこの決定をする権限をもっている」と移転の意思を改めて示した。
「札幌開催」案が報じられた直後の10月17日、報道陣に問われた山西は「どこで開催になろうともやるべきことは変わらない」と冷静さを保ったが、開催地の気候という前提条件が定まらないままでは、対策を練ることもできない。