ライフ

全米最優秀女子高生の母がコーチ「2020年からの子育て」

ボーク重子さん(撮影/浅野剛)

 日本では2020年の教育改革で、これまでの学力偏重型教育から非認知能力教育へのシフトがやっと始まる。20年前から非認知能力育成に重きを置き始めたアメリカで、娘・スカイさんの子育てをしたのが福島県出身のボーク重子さん。2017年にはスカイさんが「全米最優秀女子高生コンテスト」で優勝し、日米の多くのメディアに登場した。最近は子育ての経験、またライフコーチとしての経験を元に書籍『「パッション」の見つけ方』(小学館)を発売し話題になっているが、娘の誕生当時は、慣れないアメリカでの生活に子どもの世話が加わり、ストレスがたまる毎日だったという。ボークさんが語った。

 * * *
 そのストレスの最大の原因は、「自分を見失ってしまう感覚」にあった。

「私は子育てと主婦業で心身ともにいっぱいいっぱいで、自分が何者で何をしたい人間だったのか、まるでわからなくなっていました。地元ワシントンDCのおかあさんたちと話す機会があると、みなさん自分の活動について話します。それが仕事の話であることもあれば、ボランティアのこともありますが、とにかく『あなたは何をしているの?』と聞かれて『子育て』『主婦』と答える人は存在しないことに驚きました。日本とは感覚がまるで違うのです。みな熱心に子育てをしているのは当然ですが、一方で“自分の人生”の軸をしっかり保っているのです」(ボークさん、以下同)

 たとえば、“人種差別のない学校を作る夢のために今は複数の学校でカウンセラーのボランティアをしている”、“カフェを持つ準備としてホームレス施設で調理のボランティアをしている”などその活動はさまざまでありながら、みなその先に「自分が何をしたいか」という熱いパッションや目標の明確なイメージを持っている。

「もちろん個人差はありますが、アメリカでは母親は“お世話する”存在ではなく、“導く”存在という印象が強いと思います。自分が好きなことに邁進し、子育てとパッションを両立させる生き様を見せることで、子どもにも『自分の好きなことで生きていいんだ』『どんなに苦労しても夢を実現するためなら人はがんばれるんだ』『大人になるって楽しそう』という認識を持たせる。これは学校では教えられない、とても大切な教育です」

コンテストでは、時事問題に関する意見や、音楽やダンスなどの特技を発表し、学力や知力、体力のみならずコミュニケーション力、自己表現力などを競った。娘・スカイさん(中央)とボーク重子さん。

“導く親”になるためには、親自身がパッションを掲げ、自分を律しながら夢に向かって前進する姿を子どもに見せることが重要だ。ときには何かに躓いたり悩む姿、それを乗り越えるために努力する姿を見せることも子どもには大きな学びになる。優しく接するだけでは子どもは生き方を学ぶことはできないのだ。

 しかし、親が夢に向かって一歩踏み出そうとするとき、それを阻む要因になるものがある。「自分育て」をすることに対する罪悪感だ。

「日本のママたちに特に多いと思いますが、『母親はこうあるべき』という強い固定観念があるため、完璧な母親像を目指してしまい、“子どものためにこんなこともできていないのに、自分のために時間をさいてはいけない”と感じてしまう感覚です。ここで必要なことは3つ。一つは、自分を褒める習慣をつけること。“これしかできていない“を”ここまでできた!“に変更する。親自身の自己肯定感が低いと子どもの自己肯定感も低くなることはさまざまな研究でも証明されています。

 二つ目は、常識からの解放。そもそも常識は、誰が作ったものがわかりませんし、最近の研究で働く母親の元で育った子どものその後の年収など追跡調査をしたところ、“働く母親は子どもにとって不利益”というのは単なる迷信だったことがわかりました。

 三つ目、一日15分でいいので、純粋に自分のためだけの時間を作る、その間は妻業も母業も絶対にしない。可能なら毎日決まった時間帯にその15分をもうける。すると、次第に自分にも家族にとっても習慣になり無理して捻出する感じは無くなります」

関連記事

トピックス

2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
卓球混合団体W杯決勝・中国-日本/張本智和(ABACA PRESS/時事通信フォト)
《日中関係悪化がスポーツにも波及》中国の会場で大ブーイングを受けた卓球の張本智和選手 中国人選手に一矢報いた“鬼気迫るプレー”はなぜ実現できたのか?臨床心理士がメンタルを分析
NEWSポストセブン
数年前から表舞台に姿を現わさないことが増えた習近平・国家主席(写真/AFLO)
執拗に日本への攻撃を繰り返す中国、裏にあるのは習近平・国家主席の“焦り”か 健康不安説が指摘されるなか囁かれる「台湾有事」前倒し説
週刊ポスト
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン