このため米国の観光業界は危機感を強め、対策を急いでいる。ワシントンでは来年の春節(旧正月=来年は1月25日)の大型連休に向けて、市内のホテルの宿泊料金を値下げすることを検討。アリゾナ州では豊かな自然を生かして、来年から中国の大型連休に合わせて、観光地での屋外のアトラクションを増やすことにしている。
カリフォルニア州のサンフランシスコやロサンゼルス、ユタ州などでも、中国版ツイッター「微博(ウェイボ)」などに観光CMを多数掲載する予定だ。また、東部のマサチューセッツ州ボストンでは、中国の民間航空会社である海南航空とタイアップして、中国の主要都市とを結ぶ直行便を増やして、中国人観光客を確保しようと計画している。
しかし、トランプ政権が発足して以来、中国人への観光ビザ発給数が大幅に減っているのも事実で、2018年には申込者全体の17%が拒否されている。例年は8.5%程度なので、ちょうど2倍にもなっており、トランプ政権の姿勢を反映しているとも考えられる。
これに対して、ペンシルバニア州にあるコンサルティング会社「ツーリズム・エコノミクス」のアダム・サックス会長はAP通信に対して、「トランプ政権による米中貿易戦争によって、米国の観光業界は競争力を失っており、マーケットシェアを減らしているのは明らかだ。原因はトランプ政権にある」と指摘。サックス会長は続けて、「中国政府は米国について、銃規制が十分でなく、事故にある可能性があるほか、米国では法的に中国人が差別されて、嫌がらせを受ける可能性があると警告している」とも付け加えている。