つまり、ポジティブな意味でのファミリー層狙いであり、早くも視聴率という結果を得られはじめているだけに、中高年層がメインターゲットのテレビ朝日とTBSは安穏としてはいられません。
第2次ベビーブーム(1971年~1974年生まれ)の世代がアラフィフに入る一方、出生数が下がり続けるなど、まだまだ高齢化社会が進みそうな中、中高年層をターゲットにした戦略が間違っているわけではありません。
しかし、このところテレビ朝日とTBSの番組表は中高年層シフトが進んだことで、業界内外から「似た演出になりがちで、そろそろ飽きられるのでは?」「その他の層から“中高年チャンネル”とみなされはじめている」「その象徴で大みそか特番もある『ザワつく!金曜日』は批判を受けやすい」などのリスクが指摘されています。
また、テレビ朝日とTBSの番組関係者に話を聞いても、「視聴率が取れているからOK」ではなく、「このままでいいのか分からない」という不安の声が目立つようになりました。実際、現在のスポンサーは一般的に報じられる視聴率より、「誰が見ているか?」という個人視聴率の内訳を重視している企業が増えていますし、視聴率首位の日本テレビがその座を守るために目先の視聴率を追うのではなく、他局以上に視聴者層の内訳を重視していることがそれを証明しています。
中高年層向けの番組は、CM収入で苦戦しはじめている上に、有料コンテンツ、イベント、物販などの派生収入もあまり期待できず、社会的なブームにつながる可能性もほとんどありません。「『ザワつく!金曜日』が好スタートを切った」と言っても、テレビ業界内では冷ややかな視線を向ける人も少なくないですし、いまだ『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』を移動させたことに不満をもらす視聴者もいるなど、順風満帆とは言えないのです。
民放各局ともに先行きはまだまだ不透明ではあるものの、もともと圧倒的に強かったTBSにかげりが見えはじめているように、金曜夜のテレビ番組が混沌とした状態であることは間違いありません。
テレビ朝日とTBSはどのような方法でターゲット層を広げるか、日本テレビとフジテレビはどのような方法で大きなムーブメントにつなげていくか。より多くの試聴が見込める土日をいい状態で迎えるために、金曜夜の重要性は増しているだけに、今後も民放各局はさまざまな手段を考え、実行していくでしょう。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。