ピーク時は1日2800人、のべ150万人の作業員が働いた。総工費1569億円はザハ・ハディド案より低いものの、膨大な予算の巨大プロジェクトであることに変わりはない。予算管理上の苦労もあったと高橋氏は言う。
「これだけのプロジェクト規模だと、建築中の設計変更は避けられません。そこで事業者である大成・梓・隅共同企業体と毎週ミーティングを行ない、設計変更で予算増が見込まれると、削れる部分を再検討するなど、コストコントロールを徹底しました」
3年の工期を経てついに出来上がったのが、木のぬくもりを大切にし、神宮外苑の自然との調和を目指した「杜のスタジアム」だ。低木を含め4万8000本、130種が植樹され、水が流れるせせらぎも整備された。
「これまでのゴタゴタを払拭する出来栄えだと思います。ただ完成はゴールであると同時に、新たなスタートでもあります。五輪終了後を見据えて、今後はスタジアムの活用方法を議論していく必要があるでしょう」(森山氏)
◆取材・文/戸田梨恵 撮影/小倉雄一郎
※週刊ポスト2019年12月6日号