一方、ARBと同様に第一選択薬として処方される「カルシウム拮抗薬」は、血管を収縮させる働きのある「カルシウムイオン」が血管に流入するのを阻害し、血圧を下げる薬だ。

 そのひとつである「アムロジピン」の服用後には、70代男性が「劇症肝炎」「薬疹」を発症して亡くなっている。

 また別のタイプの降圧剤であり、こちらも第一選択薬の「利尿剤」も、比較的安価なため国内で多く処方されている。体内の塩分と水分を排出することで血液量を減少させ、血圧を下げる薬だ。その一種の「ナトリックス」を飲んだ後に、60代男性が「中毒性表皮壊死融解症」で亡くなった例が報告されている。

「この中毒性表皮壊死融解症という疾患は全身に水ぶくれや皮膚のただれなどが生じ、悪化すると全身やけどのような状態になる。薬に対するアレルギー反応により発症するとみられていますが、詳細なメカニズムはわかっていません」(長澤氏)

 降圧剤のタイプによって様々な症例が報告されているわけだが、より注意が必要なのは複数のタイプを同時に服用している場合だ。とりわけ降圧剤は、まず1種類から飲み始め、十分に血圧が下がらなかった場合に2種類、3種類と数を増やしていくケースが多い。

「『カルシウム拮抗薬とARB』『カルシウム拮抗薬と利尿剤』など2つのタイプなら血圧を下げるうえで有効な組み合わせがわかっていますが、3剤以上では降圧効果や副作用について明らかになっていない部分が多い。薬の種類が多いぶん注意しなくてはいけない重篤な副作用は当然、増えることになる。もちろん、高血圧患者は『血圧を下げること』が最優先ですが、少しでも体に異変を感じたらすぐに医療機関を受診してほしい」(長澤氏)

※注/薬剤師・長澤育弘氏の監修のもと、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が公開する「副作用が疑われる症例報告に関する情報」データベースに掲載された、副作用・有害事象が疑われる症例報告から、被疑薬と死亡との因果関係が否定できないものの死亡事例を抜粋。掲載した医薬品は、厚生労働省「第4回NDBオープンデータ 内服薬 外来(院外)」(2017年4月〜2018年3月)から、60歳以上男性への処方量が多い順。

※週刊ポスト2019年12月13日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
《浜松・ガールズバー店員2人刺殺》「『お父さん、すみません』と泣いて土下座して…」被害者・竹内朋香さんの夫が振り返る“両手ナイフ男”の凶行からの壮絶な半年間
NEWSポストセブン
リモートワークや打合せに使われることもあるカラオケボックス(写真提供/イメージマート)
《警視庁記者クラブの記者がカラオケボックスで乱痴気騒ぎ》個室内で「行為」に及ぶ人たちの実態 従業員の嘆き「珍しくない話」「注意に行くことになってるけど、仕事とはいえ嫌。逆ギレされることもある」 
NEWSポストセブン
「最長片道切符の旅」を達成した伊藤桃さん
「西国分寺から立川…2駅の移動に7時間半」11000kmを“一筆書き”した鉄旅タレント・伊藤桃が語る「過酷すぎるルート」と「撮り鉄」への本音
NEWSポストセブン
ドジャース・山本由伸投手(TikTokより)
《好みのタイプは年上モデル》ドジャース・山本由伸の多忙なオフに…Nikiとの関係は終了も現在も続く“友人関係”
NEWSポストセブン
齋藤元彦・兵庫県知事と、名誉毀損罪で起訴された「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志被告(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志被告「相次ぐ刑事告訴」でもまだまだ“信奉者”がいるのはなぜ…? 「この世の闇を照らしてくれる」との声も
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
《高田馬場・女性ライバー刺殺》「僕も殺されるんじゃないかと…」最上あいさんの元婚約者が死を乗り越え“山手線1周配信”…推し活で横行する「闇投げ銭」に警鐘
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱親方と白鵬氏
旧宮城野部屋力士の一斉改名で角界に波紋 白鵬氏の「鵬」が弟子たちの四股名から消え、「部屋再興がなくなった」「再興できても炎鵬がゼロからのスタートか」の声
NEWSポストセブン
環境活動家のグレタ・トゥンベリさん(22)
《不敵な笑みでテロ組織のデモに参加》“環境少女グレタ・トゥンベリさん”の過激化が止まらずイギリスで逮捕「イスラエルに拿捕され、ギリシャに強制送還されたことも」
NEWSポストセブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
荒川静香さん以来、約20年ぶりの金メダルを目指す坂本花織選手(写真/AFLO)
《2026年大予測》ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート 坂本花織選手、“りくりゅう”ペアなど日本の「メダル連発」に期待 浅田真央の動向にも注目
女性セブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン