兄貴は本の虫で、毎日毎日遅くまで小さな灯りで小難しい本を読んでたもんだよ。だけど、オイラの家は親も兄弟も狭い部屋で一緒に寝てたんで、オヤジが「電気がもったいねェから消せ」ってうるさくてさ。しょうがないから、こっそり外に出て、街灯の下で夜中まで本を読んでたというね。
理由はどうあれ、昔の子供ってのはとにかく家の中にはいたくなかったんだよ。早く自立して、1人暮らしをしたいって思うのが普通だったんでね。
最近はなんでも“子供の権利を尊重する”って風潮だけど、それが裏目に出てる。いっそのことニッポンは「1人部屋禁止法案」を作るべきだね。子供からすりゃたまったもんじゃないかもしれないけど、きっと悪いほうには転ばないぜっての。
※ビートたけし/著『芸人と影』(小学館新書)より