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国境の島・与那国島 サトウキビの栽培で「国土を守る」

沖縄・与那国島のサトウキビ畑

「農地」とは何か。食物の生産の場だけではない。開墾して耕し、種をまいて収穫するためには、誰かがその土地を見守り続けなければならない。雨の日も風の日も、そこに異変がないか、「土地を守ること」を意味する。離島のサトウキビ栽培が置かれている現実から、改めてその重要性を考えてみた。

 * * *
 飛行機が高度を下げながら旋回すると、周囲を崖に囲まれた島が見えてきた。沖縄・那覇から南西に510km。日本最西端の島・与那国島である。天気がよい日には島の岬から台湾が見えるという。台湾まではわずか110kmだ。

 領有権をめぐり日中の緊張の舞台となっている尖閣諸島からも近く、2016年にはこの島に陸上自衛隊の沿岸監視隊が配備された。その任務は、付近を航行する艦艇や航空機が発する信号をレーダーでキャッチし収集すること。まさに「国境の島」なのである。

 11月中旬だというのに、気温は25℃を超えていた。空港から車で5分も走れば中心集落に着くが、島で唯一の診療所や飲食店が点在するばかり。島内に高校がなく、中学卒業とともに子供たちは石垣島や沖縄本島の高校に進学するため、島に若者がなかなか定着しないそうだ。1950年代に6000人を超えた人口は、1700人ほどにまで減った。

 他国と接する離島の住民が減り続け、いずれ無人島化するかもしれない──それは日本の国防、安全保障にとっても大きなダメージとなる。

 そんな島の経済を支える産業が、サトウキビの生産と黒糖の加工である。台風被害に悩まされ続ける沖縄の離島では、葉物野菜の栽培が困難だ。台風で倒れても再び起き上がり、塩害にも強いサトウキビは貴重な作物なのだ。

 与那国島でサトウキビを生産する農家はおよそ70戸。その中でも、松原永政さん(46才)は最も手広く手がける農家だ。毎日畑に出ているというだけあって真っ黒に日焼けした屈強な体つきの持ち主である。

 実は、松原さんはサトウキビの栽培を始めてまだ5年目。それまで建設会社の作業員だったが、体調を崩し療養を余儀なくされた。そんな時、地元のJAおきなわの職員に「サトウキビを作ってみないか」と誘われた。これまでも少し栽培していたこともあり、本格的に取り組んでみることにしたという。

真っ黒に日焼けした肌が精悍な松原さん

◆「株出し」「夏植え」「収穫」手作業の重労働

 まずは、6ヘクタールの畑を借り、トラクターや除草機などの農業機械を買い揃えてスタートした。栽培のノウハウは、島内の先輩農家の指導を受けながら学んだ。

 サトウキビは、冬から春にかけてが収穫の時期。その作業と並行しながら「株出し」をする。茎を刈り取った後の株から新しい芽や根が出るよう、古い根を切り落とす作業のことだ。

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