乃木坂氏は、代表的作品である『医龍-TeamMedicalDragon-』では医療の現場を、前作『第3のギデオン』ではフランス取材を敢行しており、取材を“する”タイプの作家といえるだろう。筆者は様々な段取りを整え、今年1月と4月、東京拘置所への取材に同行するに至った。

 小菅駅からの道のりをゆっくりと歩きながら、M氏がその景色を写真に収める。乃木坂氏はただひたすらに周囲を観察している。敷地外にある差し入れ屋をしげしげと眺めていた。東京拘置所の敷地内に入ってからは撮影は行わず、M氏も乃木坂氏とともに“観察モード”となった。面会申請の窓口や、差し入れ窓口の形状や職員の振る舞いを眺めたのち、差し入れ屋が取り揃えている商品のラインナップをしっかりと確認していた。面会人の待合室にあるソファに座り、番号が表示されるモニタや、目の前にある大型テレビ、他の面会人の様子を見つめる。

 そして、いよいよ面会室へ向かうこととなったそのとき、乃木坂氏がせっぱ詰まった様子でこう訴えはじめた。

「紙とペンを……!」

 慌てて筆者が持っていた予備の極細ゲルインクペンを渡すがノートは1冊。そこから1枚だけビリリと破り取り、残りのノートを乃木坂氏に手渡すと、一心不乱に何か書き留め始めた。そっと覗き込むと、身体検査場や廊下など、様々な場所を驚異的な速さでデッサンしている。とにかく速いのだ。ページがどんどん消費され、最後は裏表紙にまで描き込んでいた。神業を見てしまった瞬間だった。

 面会取材を終えたのち、拘置所の向かいにある喫茶店『アイアイ』で休憩して帰路に着いた。

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