では、提出される証拠はどんなものが多いのか。前出の神坪弁護士によれば、メール、LINEのやりとりが最も多く、最近は音声データも増えているそう。基本的に密室で行われることが多いが、稀に目撃者がいる場合もあるという。

 セクハラの被害を訴えるときには、これらの明確な証拠を持ち、覚悟を決めて告発をすることが必要であるわけだ。

 セクハラで訴えられないための事前の予防策としては、どんなことがあるだろうか。神坪弁護士が続ける。

「まずは、触る、50センチ以内に近づくといった明確に“アウト”な線について知っておくこと。メールやLINEのやり取りは、勘繰られるような表現を使わず、仕事の具体的な内容だけにとどめること。そして、グレーゾーンについては、セクハラと相手が感じるかどうかは『主観』がベースになっていることをはっきり認識しておくことです。

 主観は外からは見えないし、時間が経てば変わることがある。また、同じことを言ってもAさんはOK、BさんはNGということがある。誰から言われるかによっても違ってきます。『女性とはこうあるべきもの』という価値観を持っている人は特に要注意。たとえば、『宴席に女の子がいると嬉しいよね』とか、『女性は容姿を褒めれば喜ぶもの』と思っている場合です。上司や取引先など上の立場にいる人は、相手が明確にNOの意思表示をしにくいことをわかっておくことも必要です」

 以上の点に留意して、読者諸氏にはあらぬ疑いをかけられないよう気を付けていただきたい。それに、社内恋愛にはリスクが伴うということにも……。

●取材・文/岸川貴文(フリーライター)

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