国内

『同期のサクラ』が連想させるあの“疑惑の桜”の見苦しさ

「忖度」できない人間は排除されるしかないのか(公式HPより)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々を心理的に分析する。今回は、まもなく最終回を迎えるドラマ『同期のサクラ』(日本テレビ系)を分析。

 * * *
 民放の連続ドラマはもう最終回。この秋クールは、米倉涼子主演の木曜ドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)を始めとするシリーズものが順調に視聴率を稼ぐ中、なかなかの健闘ぶりを見せているドラマがある。高畑充希主演の『同期のサクラ』だ。

 高畑演じる主人公「北野桜」は、バカがつくほど正直で忖度知らず。花村建設に入社して、故郷の島に橋を掛ける、人を幸せにする建物を造るという夢に向かって突き進むのだが、そこには忖度できない不器用さや一途な生真面目さが招く数々の試練が待ち受けている。このドラマは、そんなサクラと同期たちの10年間が描かれている。

 ドラマの中では、毎朝繰り返されるルーチーン、きれいに片付いた部屋、毎日同じ地味なスーツ姿、はっきりした丁寧な話し方、同じ角度で名刺を出しお辞儀する姿など、不器用さや生真面目さが際立つようサクラのキャラが描かれている。

 サクラのようにはっきりしたキャラは、俳優にとって演じやすいだろうが、確かな演技力がないと、見ているうちに動きやセリフが鼻についてくるものだ。そうなると、せっかくの演技も薄っぺらく面白味にかけ、だんだんと飽きがくる。だが高畑さんは、大袈裟でわざとらしい演技と微妙な演技を使い分けるのがうまい。目や声の微妙な変化、身体の細かな動きで感情を表現し、サクラの内面をしっかりと演じているのだ。

 サクラは、組織の中で忖度するのが当たり前と思われるシーンで、立場が上の相手にまっすぐに視線を向けたまま、自分の意見をストレートにぶつける。ここでいう忖度とは、融通を利かせ、見て見ぬ振りをし、長い物には巻かれること。それができないサクラに、周囲は期待に沿うよう、組織の求める行動をするよう「大人になれ」と圧力をかける。「同調圧力」だ。同調圧力がかかろうと、サクラは自分の心に嘘をつかず、まっすぐに自らの道を進もうとする。しかし、組織はそれを許さない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
このほど発表された新型ロマンスカーは前面展望を採用した車両デザイン
小田急が発表した新型は「白いロマンスカー」後継だというけれど…展望車復活は確定だが台車と「走る喫茶室」はどうなる?
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン