国際情報

米イラン衝突を招いたトランプ大統領の「ミルグラム効果」

イランの報復攻撃への対応は…?(AFP=時事)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、報復攻撃も開始され、一気に状況が緊迫するアメリカ・イラン情勢について考察。

 * * *
 日本時間の8日朝、ついにイランの報復攻撃が始まったアメリカとイランの対立。その要因を紐解いてみたい。

 イランの革命防衛隊の精鋭組織「コッズ部隊」のソレイマニ司令官が、イラクで米軍の空爆によって殺害されたことを受け、ドナルド・トランプ米大統領は3日、記者会見で「われわれは昨夜、戦争を止めるために行動を起こした」と神妙な面持ちで述べた。

 これまで何度もばかげた戦争はしないと述べていただけに、「戦争を始めるために行動を起こしたのではない」と改めて自身の行動を正当化。殺害した理由を、昨年末31日にイラクのアメリカ大使館が攻撃を受けたことと、自国の外交官や軍人への攻撃を計画していたためと説明。

 ツイッターでも、ソレイマニ司令官をテロリストとして「何年も前に排除されるべきだった」と述べ殺害を正当化。米政府は実際、昨年4月、革命防衛隊を外国テロ組織に指定していた。

 米大使館襲撃以前にもイランは、昨年6月に米軍の無人機を撃ち落とし、9月にはサウジアラビアの石油施設を攻撃、12月にはイラク北部を攻撃し米国の民間人1人が死亡、米軍兵士4人が負傷していた。米国内では度重なるイランからの攻撃に対し、何ら行動を起こさない大統領を「弱腰」と非難する声が大きくなっていたこともある。

 トランプ大統領にとっては、自身の決断を正当化する理由が次々に出てきたことで「殺害の合理化」が行いやすくなったのだ。「合理化」とは自我を守るための防衛機制の1つで、自分の行動や考えを都合のよい言い訳や言い逃れ、理屈で正当化することをいう。

 これまで、米国とイランの間で緊張が次第に高まる中でも動かなかったトランプ大統領だが、大使館襲撃によりイランへの攻撃を自身の内で合理化する条件がついに揃ったのだろう。イランの英雄と呼ばれる司令官の殺害という、世界中に強い衝撃を与える形で報復を行った。

 ツイッターによる過激なメッセージの配信、メキシコ国境の壁の建設、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との直接会談などを見ても、最も効果的でインパクトが強く、誰も考えないようなやり方で、世界に自身の力を見せつける方法を選択するのがトランプ流だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《小室圭さんの赤ちゃん片手抱っこが話題》眞子さんとの第1子は“生後3か月未満”か 生育環境で身についたイクメンの極意「できるほうがやればいい」
NEWSポストセブン
山本アナ
「一石を投じたな…」参政党の“日本人ファースト”に対するTBS・山本恵里伽アナの発言はなぜ炎上したのか【フィフィ氏が指摘】
NEWSポストセブン
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
【独占インタビュー】お嬢様学校出身、同性愛、整形400万円…過激デモに出没する中核派“謎の美女”ニノミヤさん(21)が明かす半生「若い女性を虐げる社会を変えるには政治しかない」
NEWSポストセブン
今年の夏ドラマは嵐のメンバーの主演作が揃っている
《嵐の夏がやってきた!》相葉雅紀、櫻井翔、松本潤の主演ドラマがスタート ラストスパートと言わんばかりに精力的に活動する嵐のメンバーたち、後輩との絡みも積極的に
女性セブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
思い切って日傘を導入したのは成功だった(写真提供/イメージマート)
《関東地方で梅雨明け》日傘&ハンディファンデビューする中年男性たち デパートの日傘売り場では「同い年くらいの男性も何人かいて、お互いに\\\\\\\\\\\\\\\"こいつも買うのか\\\\\\\\\\\\\\\"という雰囲気だった」
NEWSポストセブン
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン