ビジネス

キャッシュレス決済普及を阻む「決済マフィア」を解体せよ

既得権益が維持される限り、キャッシュレスは広がらない(イラスト/井川泰年)

 2019年10月の消費税率引き上げに合わせて政府が導入した「ポイント還元事業」でキャッシュレス決済が拡大している。しかし、このキャンペーンが終了したらキャッシュレス決済普及は頭打ち、もしくは減少に転じるのではと言われている。経営コンサルタントの大前研一氏は、日本でキャッシュレス決済の展望が明るくないのは、“決済マフィア”とも言うべき既存金融機関などの利権を古いシステムが温存されているからだと指摘する。日本でキャッシュレス決済を拡大させるには何が必要か、大前氏が解説する。

 * * *
“決済マフィア”については『日経ビジネス』(2019年11月18日号)の特集が話題になったが、本連載でも法人や個人の銀行口座間の送金に高い手数料を課している全銀システム(全国銀行データ通信システム)やCAFIS(カフィス)などのカード決済サービスの問題点を繰り返し指摘してきた。ようやく公正取引委員会が、それらがフィンテック企業の決済事業への新規参入を阻害していないかどうか調査を始めたが、“決済マフィア”の既得権益が維持されている限り、日本の消費者や小売業者は真のキャッシュレス決済の恩恵を享受することはできないのである。

 今のユビキタス時代は「デビット方式」ならクレジット会社や金融機関に頼らなくても、個人個人の信用(クレジット)は瞬時にわかる。デビットカードは商品を購入した際に代金が銀行口座から即座に引き落としとなるからで、残高が足りなければ決済できないだけのことである。

 一方、クレジットカードは、個人ではなく店の信用度により加盟店から3~5%の決済手数料を取っている。カードを発行している銀行は、個人に対する信用格付けを行なっていない。

 だが、本来、銀行が預金者の口座をきちんと管理していれば、その人の信用度は容易に把握できるはずだ。たとえば、10年も20年も公共料金や家賃、カード代金などの自動引き落としが滞ることが一度もなかったら、その人の信用度は高い(リスクが低い)とわかる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

真美子さんが“奥様会”の写真に登場するたびに話題に(Instagram /時事通信フォト)
《ピチピチTシャツをデニムジャケットで覆って》大谷翔平の妻・真美子さん「奥様会」での活動を支える“元モデル先輩ママ” 横並びで笑顔を見せて
NEWSポストセブン
「全国障害者スポーツ大会」を観戦された秋篠宮家・次女の佳子さま(2025年10月26日、撮影/JMPA)
《注文が殺到》佳子さま、賛否を呼んだ“クッキリドレス”に合わせたイヤリングに…鮮やかな5万5000円ワンピで魅せたスタイリッシュなコーデ
NEWSポストセブン
クマによる被害が相次いでいる(左・イメージマート)
《男女4人死傷の“秋田殺人グマ”》被害者には「顔に大きく爪で抉られた痕跡」、「クラクションを鳴らしたら軽トラに突進」目撃者男性を襲った恐怖の一幕
NEWSポストセブン
遠藤
人気力士・遠藤の引退で「北陣」を襲名していた元・天鎧鵬が退職 認められないはずの年寄名跡“借株”が残存し、大物引退のたびに玉突きで名跡がコロコロ変わる珍現象が多発
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《スイートルームを指差して…》大谷翔平がホームラン後に見せた“真美子さんポーズ”「妻が見に来てるんだ」周囲に明かす“等身大でいられる関係”
NEWSポストセブン
相撲協会と白鵬氏の緊張関係は新たなステージに突入
「伝統を前面に打ち出す相撲協会」と「ガチンコ競技化の白鵬」大相撲ロンドン公演で浮き彫りになった両者の隔たり “格闘技”なのか“儀式”なのか…問われる相撲のあり方
週刊ポスト
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《「策士」との評価も》“ラブホ通いすぎ”小川晶・前橋市長がXのコメント欄を開放 続投するプラス材料に?本当の狙いとは
NEWSポストセブン
女性初の首相として新任会見に臨んだ高市氏(2025年10月写真撮影:小川裕夫)
《維新の消滅確率は90%?》高市早苗内閣発足、保守の受け皿として支持集めた政党は生き残れるのか? 存在意義が問われる維新の会や参政党
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月25日、撮影/JMPA)
《すぐに売り切れ》佳子さま、6万9300円のミントグリーンのワンピースに信楽焼イヤリングを合わせてさわやかなコーデ スカーフを背中で結ばれ、ガーリーに
NEWSポストセブン
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
《安倍晋三元首相銃撃事件・初公判》「犯人の知的レベルの高さ」を鈴木エイト氏が証言、ポイントは「親族への尋問」…山上徹也被告の弁護側は「統一教会のせいで一家崩壊」主張の見通し
NEWSポストセブン
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン