認知症になると少なからず生活上うまくいかないことが出てくる。本人も焦るし、家族も困惑する。本人にはそんな環境が大きなストレスで、妄想や暴言など家族を困らせるBPSD(周辺症状)となって表れることもあり、どんどん“厄介者”になってしまう。
グループホームはそんな環境から離れ、認知症が理解される少人数の環境で、自分らしさを取り戻す場なのだ。
「大切なのは本人自身が自分の生活を組み立てることで、規則やスケジュールに従う暮らし方ではありません。朝7~9時頃、職員と入居者さん数人が朝ご飯を作る。すると各居室から自然と集まって来ますが、自分のペースで起きる人もいます。日中は散歩をしたりテレビを見たり、思い思いに過ごしますが、冷蔵庫の中を見て昼食や夕食を相談し、足りない食材を近所に買いに行くこともあります」(林田さん)
入浴も交替で自由に。入らなくても強いられないし、消灯時間もない。
「大人数の施設では、どうしてもルールの中にはめ込まれる。認知症の人にとってはそんなこともつらいのです。もちろんグループホームにいても混乱したりBPSDを発症したりすることはありますが、専門職員は症状もひっくるめてその人を見る。だからそれぞれの人の意思を尊重できるのです」(林田さん)
普段意識しないが、私たちも自分の意思で生活しているからこそ楽しい。その人が認知症になる前、自分の意思で暮らしていた頃の生活感がいわば“自分らしさ”なのだ。
夕方になると、『きみさんち』では料理雑誌を開いて夕飯の相談が始まる。「これ、おいしそうだね~」「さつまいもあるかな?」といい笑顔が並んでいた。
◆認知症の人は猛烈にがんばっている!!