好スタートを切ったもう1つの理由は、他枠のラインアップ。今冬はプライム帯(19~23時)で放送される16作中12作が刑事・医療ドラマに偏ってしまったため、必然的に『テセウスの船』のような長編ミステリーが際立つ状況となっています。
「毎日、殺人事件の解決や、病気の治療ばかり」のドラマに食傷気味となった視聴者が、豪華キャストで大作のムードが漂う『テセウスの船』が気になり、見たら「面白かった」と感じやすい状況であるのは間違いありません。
好スタートを切ったあとの2話以降で求められるのは、物語の面白さ。制作サイドは「泣ける本格ミステリー」「この謎に、涙する」と自信満々だけに、成否の鍵は「視聴者をどれだけハラハラドキドキさせ、要所で泣かせることができるか」にかかっています。
残虐な事件をめぐるヒリヒリするような緊張感と、時折見せる家族のあたたかさ。ミステリーとホームドラマの長所を効果的に交錯させることで、右肩上がりで盛り上がり、さらなる支持を得られるのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。