さらにこの『閨中交歓図』にはこんな想像さえ膨らむという。
「“戴斗”号の下に“房中写”と書かれています。署名下にわざわざ記すということは、実際に男女のモデルがまぐわっている場に居合わせ、写生した可能性があり、思い入れや迫力が感じられます」(同前)
『春愁図』にはこんな期待が高まる。
「こちらは12枚1組の横長の絵巻か画帖であった可能性が高い。北斎の春画のほとんどが12枚1組であったということと、『閨中交歓図』のように署名や朱印がないことから、12枚を1枚ずつ分割したのではないかと想像できます。近年、秘蔵されていた北斎の春画が次々と出てきているように、今後も新たな発掘に期待したいですね」(同前)
さらに今回、見つかった2つの作品について、前出の早川氏が解説する。
◆閨中交歓図
「全体的にあっさりとした淡彩で紙本に描かれた作品ではあるものの、手や指の動きなどの細部のニュアンスや面長な面相、そして優れた構図からも北斎の特徴が感じられます。なによりも“房中写(房中=寝室、写=写生を表わす言葉)”と記されている点に、北斎が眼前でまぐわう男女を写生したのではないか、という想像が膨らみます」(早川氏)