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三田村邦彦 芝居に大事なのは引き算、過剰なことはしない

三田村邦彦が掴んだ演技の極意とは

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、俳優・三田村邦彦が、数多く出演した刑事ドラマで心がけていること、『渡る世間に鬼ばかり』などで体験した石井ふく子氏の演出から学んだことについて語った言葉をお届けする。

 * * *
 三田村邦彦はこれまでのキャリアの中で、刑事ドラマに数多く出演している。

「刑事役は犯人に対して上から目線的なセリフが多かったりするのですが、そうならないような言い方を心がけてはいます。同じような立ち位置で相手に接することができないかと。

 藤田まことさんがまさにそうでした。説明ゼリフも自分の感情としてお話しになる。被害者の状況を伝えるにしてもただ説明するだけでなく『ああ、可哀そうだ』という感情が伝わる。

 最近だと『相棒』の水谷豊さんですね。日テレの刑事ドラマで共演した時もそうでしたが、初日から完璧に役作りができている。怒りをぶつけるタイミングを心がけて演じていました」

 一九九〇年から人気テレビドラマ『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)にレギュラー出演している。プロデューサーの石井ふく子は、これまでホームドラマ一筋を貫いてきた。

「『私は人殺しと戦争のドラマは作らない』と石井ふく子さんはおっしゃっていました。そういうのを簡単に作ってはダメだというのがあの人の中にはあるようです。

 特に戦争に関しては、ご自身が空襲を体験していますから、戦争映画を見ていても『あんなもんじゃない』って。『どうやってもあの悲惨さ、生々しさは映像では表現できない。あの現実に打ち勝つ映像はできない。だから作らない』というのがプロデューサーとしての根本にある。

 だから作品が物凄く温かいんです。ホームドラマだからこその、ほのぼのとした温かさ。

『渡る世間は鬼ばかり』はみんなが酷いことを言い合ってたりします。嫁姑に小姑。でも、それを見ながら『あの姑は酷い』と言っている自分自身が『鬼』というのが石井さんのテーマなんです。『あの人たちは自分の鏡、自分自身を見直しなさい』という。心底から人間が好きな、温かい人だと思います」

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