国内

東京五輪「マスギャザリング」の恐怖、3か月延期の提案も

大勢の選手、観客間の「濃厚接触」は避けられない(写真/AFP=時事)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ネット上で「五輪・パラリンピックが開催中止に」とのデマが広まった。

 東京都はすぐさま否定したが、多くの人がこのデマに反応してしまったのは、五輪開催が“今、そこにある危機”と感じられているからではないか。パンデミック(感染爆発)で起きる「最悪の事態」を知っておく必要がある。

 新型コロナウイルスの感染者は、重症急性呼吸器症候群(SARS。感染者8000人超、死者774人)を遥かに上回るペースで増え続けている。グローバルヘルスケアクリニック院長の水野泰孝医師(輸入感染症)が指摘する。

「2002年11月に中国で発生したSARSの終息が宣言されたのは8か月後の2003年7月でした。昨年12月に発生した新型コロナウイルスは、このSARSとゲノム配列がよく似たウイルス。同様に8か月ほど、今年8月頃まで流行が続く可能性があると考えるべきです」

 懸念されるのが、7月24日に開幕する東京五輪への影響だ。

「新型コロナウイルスのような感染症は、一定期間、限定された地域に大勢が集まる『マスギャザリング』と呼ばれる状況で拡大しやすい。世界中から1000万人を超える人々が集結する東京五輪は『マスギャザリング』の典型例で、感染者が増える条件が揃っている」(水野医師)

 開催時期には水際対策も意味をなさない。大阪健康安全基盤研究所の奥野良信理事長(ウイルス学)が続ける。

「五輪までの半年間で世界中に拡大すると、感染経路を辿るのが難しくなり、検疫などではとても感染を防げない」

 こうした“緊急事態下”での開催を疑問視する声も出ている。スポーツジャーナリストの玉木正之氏が指摘する。

「かねてから猛暑の懸念が叫ばれており、さらに感染症の危険性も高まっている。私は都や大会組織委が『3か月延期』を提案すべきだと考えます。しかし、五輪には米テレビ局の放映権料など巨額契約が絡むため、IOCに延期や中止の判断はできないでしょう」

※週刊ポスト2020年2月21日号

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