だが、前述したように、素材などの開発には多業種の企業が連携して何十年もかかる。韓国の産業界にそれができるメンタリティと研究基盤はなく、財閥のトップが号令をかけたらその間は進むかもしれないが、長続きはしないだろう。
しかも、限られたエリートが役所や財閥企業に就職し、そこから落ちこぼれた人たちは中小企業に入って、いくら努力をしても財閥に土足で踏みにじられるという歪んだ構造がある限り、脱「日本頼み」を達成するのは無理だと思う。
また、韓国ではエンジニアが冷遇されている。象徴的なのは社屋や工場だ。財閥企業の文系ホワイトカラーは高層ビルの本社オフィスにいるが、エンジニアは工場の天井から吊り下げた中二階のような環境が悪い一画に押し込められていることが多い。韓国でエンジニアになるということは、文系ホワイトカラーの“しもべ”になるのと同義と言っても過言ではない。
インドや台湾などの場合は文系ホワイトカラーよりエンジニアのほうが優遇されているし、日本では文系も理系も現場勤務からスタートするケースが多いが、韓国では稀だろう。エンジニアを下に見る韓国のメンタリティの“伝統”は、今後も変わらないと思う。
輸出規制強化の対象になった3品目をはじめとする日本製の素材や部品の中には、韓国が日本に頼らずに製造できるものもある。ホワイト国(※輸出管理制度上の優遇措置の対象国。現在は「グループA」。以下、グループB、C、Dと呼ばれる)や台湾経由で迂回輸入するという方法もすでに使われている。実際、サムスン電子は輸出規制が強化された直後に副会長が来日し、迂回輸入で調達できるように奔走していた。韓国に工場を建設する日本企業もあるかもしれない。だから、もちろん油断は禁物だが、本質的な意味で韓国に脱「日本頼み」はできない、と私は見ている。
※週刊ポスト2020年2月28日・3月6日号