捕手は常に勉強が必要と繰り返した。2017年夏の甲子園で新記録となる6ホーマーを放ち、“打てる捕手”として注目を集めた広陵・中村奨成への評価を聞いた際にも、プロのキャッチャーの心構えをこう説いていた(2017年9月15日号掲載)。
「オレは日本にキャッチャーを育てられる指導者がいないと思ったから、現役時代から自費でアメリカの教育リーグやワールドシリーズを見に行った。今のシステムで、キャッチャーをきちっと育てられるコーチはいない。要するに、自分で勉強する以外にない。捕手に求められるのはただ一点。“根拠のないサインは出すな”ということ。それがオレの考え」
その中村は翌2018年にドラフト1位で広島に入団し、2年間で一軍出場ゼロのまま。今季は真価が問われる。ただ、この「高卒即プロ入り」という決断については、野村氏は前向きに評価していた。
「大卒出に名捕手はいない」(2015年9月25日・10月2日号掲載)というのは、野村氏の持論だった。
その理由として、「18歳から22歳は一番大切な時期。基礎知識がどんどん吸収されて、野球が分かってくる。ここでアマの指導者から結果論の間違った知識が入っていくとダメになる」と話していた。それゆえか、前出の小林(同志社大→日本生命→巨人)や今季から巨人の二軍監督に就任した阿部慎之助氏(中央大→巨人)に対して、厳しい評価をすることが少なくなかった。
◆非難されるのが一流
こうした「ノムさん節」に対して、“反論”した選手もいた。