ライフ

反省する心を養わぬ「体罰」 民法で容認した間違った過去

しつけの“常識”に大きな変革の波が(写真/アフロ)

 今年4月に「改正児童虐待防止法」と「改正児童福祉法」が施行され、体に苦痛や不快感を与える罰は、たとえ、しつけのためでも禁止となる。子供をきちんとしつけるためなら体罰もやむを得ないとされてきたこれまでの“しつけ”の功罪について、考えるべき時がきた。

 恐怖心や痛みを与えても、子供は何も学ばない。心にトラウマを植えつけられ、人格形成に悪影響を与える可能性も──これが子供のしつけを巡る最新の知見だ。人によっては自分の子育てを否定されたように感じるかもしれないが、だからこそ知っておきたい「本当に子供のためになる」子育て。

◆親を追いつめるための法改正ではない

 今回の法改正の背景には、2018年の「目黒女児虐待死事件」と、2019年の「野田市小4虐待死事件」の影響がある。両事件ともに、未来ある女児が“しつけ”と称する親からの行きすぎた体罰(これらのケースでは身体的虐待などと認定)により、命を落とした事件だ。

 今後、このような悲劇が起きないよう、しつけのためだろうと、体に苦痛や不快感を与える罰は一切禁止とされる。通告を受ければ、児童相談所や、場合によっては警察が介入することになる。

 事件のような過度な体罰はレアケースだと考える人もいるかもしれない。しかし、今回の法改正に尽力した認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事の高祖常子さんは、そもそも、しつけのためなら恐怖や痛みを与えてもいいという考え方に問題があると言う。

「改正法に、体罰への罰則が明示されていないのは、親を追いつめるための改正ではないからです。しつけのためなら体罰もやむを得ないという考えを、体罰に頼らない子育てをしようという意識に変えること。そして、社会全体で子育てをしていこうとすることが目的だからです」(高祖さん)

◆これまで体罰は民法で容認されてきた

子供の体罰について、4割の人が「決してすべきではない」と回答

 2017年の調査では体罰を容認する人が約6割(公益社団法人セーブ・ザ・チルドン・ジャパンが、全国の20才以上男女2万人にウェブ調査)と、「しつけのためなら体罰はやむを得ず」と考える風潮は根強い。そもそも、なぜ体罰がまかり通ってきたのか。

「その背景には民法の懲戒権の存在がある」と言うのは、子どもの虹情報研修センター長・川崎二三彦さんだ。

「日本の民法は、親権者が子供を懲戒することを認めていました。その中には体罰も一部含まれていたため、子供に暴力を振るった親が、しつけだと言って言い逃れし、結果として深刻な事態になることが多かったのです」(川崎さん)

関連記事

トピックス

高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
阿部なつき(C)Go Nagai/Dynamic Planning‐DMM
“令和の峰不二子”こと9頭身グラドル・阿部なつき「リアル・キューティーハニー」に挑戦の心境語る 「明るくて素直でポジティブなところと、お尻が小さめなところが似てるかも」
週刊ポスト
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン