◆体罰では反省する心は養われない
とはいえ、体罰はしていたが子供はちゃんと一人前に育ったという人もいるだろう。
「子供は暴力を振るわれるのはいやだという気持ちから親の言うことを聞くようになります。それでは自分の行為に対して、反省する心は養われないのです」(川崎さん)
しかも、暴力は繰り返されると慣れてしまい、反省はもちろん服従もしなくなり、むしろ憎しみが芽生える。すると親は「もっと痛い目に遭わせないと」と考え、暴力がエスカレート。虐待へとつながる。
「これまでも、殴るなどの暴力で傷を負わせたり、生命に危険を及ぼすような身体的虐待につながる体罰は許されませんでしたが、虐待と体罰の線引きは明確ではありませんでした。そのため体罰から、命に危険を及ぼすような虐待に至るケースもあったのです」(川崎さん)
虐待には、身体的暴力だけでなく激しい叱責も該当する。口頭で叱るだけでも、子供に恐怖心を与えれば、心理的虐待になる。厚労省「福祉行政報告例(平成30年度)によると、「身体的虐待」が25.2%、「性的虐待」が1.1%、「心理的虐待」が55.3%、「保護の怠慢・拒否(ネグレクト)」が18.4%となっている。近年の虐待の傾向は、「お前なんて生まれてこなければよかった」などと言って心理的に苦しめるケースが増えてきている。
※女性セブン2020年3月5日号