◆当初の不安を払拭した『テセウスの船』

 両作が放送されている“ドラマ枠”の力が影響を及ぼしていることも間違いありません。

『テセウスの船』が放送されている「日曜劇場」は60年超の歴史を持つ伝統枠であり、日曜夜で視聴者層も広く、常に視聴率首位争いをしているなど、「多くの人々に見られ、いい作品なら評価されやすい」という環境が整っています。

 一方の『10の秘密』の「カンテレ火9ドラマ」は、他枠とは一線を画すアグレッシブな制作姿勢で固定ファンこそいるものの、現在10作連続1桁視聴率と大苦戦中。低迷が続いていることで、いい作品でも第1話の段階から見てもらえるチャンスが少なくなっているのです。

 現在は残酷なまでの明暗が分かれていますが、『テセウスの船』も放送開始当初は決して順風満帆とは言えない状態でした。タイムスリップをベースにしたファンタジーに嫌悪感を示す人や、「老けメイクがひどい」「平成元年ネタが寒すぎる」と批判する人が少なくなかったのです。

 それらの声を払拭したのは、前述した雪山ロケ、俳優たちの熱演、原作の犯人を変える脚色、PRイベント。言わば、スタッフとキャストの惜しみない努力で不安材料を吹き飛ばしてしまったのでしょう。

 両作ともに群を抜いて志の高いドラマであったことは疑いようがありません。また、厳しい状況にあるものの、『10の秘密』は決して酷評されるような質の低い作品ではないでしょう。だからこそ、まだ中盤の段階で、これほどの明暗が分かれてしまう現在のドラマシーンの厳しさを感じずにはいられないのです。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。

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