じつはe-POWERは市販乗用車初のシリーズハイブリッドではない。たとえば2013年にホンダが発売した「アコードハイブリッド」はシリーズ方式の一例だ。
筆者がアコードハイブリッドで東京~鹿児島間を3500kmほどツーリングしたときは、オーバーオールで約25km/Lという素晴らしい燃費性能を発揮するなど驚異的な性能を持っていたが、「i-MMD」という何の略だか推測できないシステムネーミングが災いしてか、その特質はほとんど浸透しないまま終わった。充電のいらない電気自動車というふれ込みでe-POWERが爆発的に売れたのを見て、本田技術研究所のエンジニアたちが切歯扼腕するのに接したことは記憶に新しい。
だが、そのe-POWERマジックも永遠ではない。現行ノートのe-POWERは加速がきわめて良いこと、加速感がスムーズであることなどさまざまな長所がある半面、速度が上がったときの燃費の落ち幅がハイブリッドカーのライバルの中でも大きめという弱点もある。
もともとe-POWERはハイブリッドでトヨタと同じステージに立つことを嫌ったゴーン氏を「これはEVです」と説得しながら急きょ開発したもので、純EVの「リーフ」のモーターや出力制御コンピュータ、エンジンもノートのガソリンエンジンをチューニングし直したもの……と、ありものを寄せ集めたという経緯がある。
「だから短期間で開発できたのですが、理想的な設計というわけではありません。しかし、次のe-POWERは熱効率を含め、ハイブリッドに適したエンジンを組み合わせることになる。燃費性能自体も向上しますし、運転の仕方や交通モードの違いによる燃費差も小さくできる」(日産のエンジニア)
次期ノートは走りや快適性については、現行モデルから相応に引き上げられるものと推測される。現行モデルはベーシックカー「マーチ(海外名マイクラ)」と共通のもので、走行性能や乗り心地の滑らかさの確保、騒音・振動の抑え込みには限界があった。「次期型はクルマの基本設計を刷新しますので、とくに快適性については現行よりかなり良くできる」(日産事情通)という。