汐留は1986年まで国鉄汐留駅だった(時事通信フォト)

現在の汐留のビル群があるエリアは1986年まで国鉄汐留駅だった(時事通信フォト)

「最初は日テレに出入りしていたのではないか、など噂されていましたが、こちらは確実な感染確認が取れたそうで、やはり激震が走りました」

 こう話すのは、本社勤務の電通社員。日テレで“出たらしい”などと噂をしていたところに、まさに後頭部を殴られたような衝撃だったという。電通は直後、社員の「リモートワーク」、つまり在宅勤務体制をとることを表明。電通と日テレの間に本社ビルを構える化粧品大手「資生堂」も社員の多くを在宅勤務にすると発表した。

 汐留という狭いエリアで、相次ぐ新型コロナウイルスを巡る騒動。近くには大手航空会社や大手運輸会社など、日本を代表するような大手企業の本社がズラリ。汐留のど真ん中にある飲食店スタッフが声を潜める。

「うちは場所柄、電通さんにも日テレさんにもご利用いただいていますが、先週末から一気に人が減りました。昼はランチ、夜は居酒屋スタイルの営業ですが、特に夜は人が少ない。朝の通勤時間帯など、駅構内も含めて普段より明らかに人が減っている。道行く人はほとんどがマスク姿です。中国の話だと危機感を感じることはありませんでしたが、まさか汐留がと思うと……。ただそこまでの実感はなくて」(飲食店スタッフ)

 汐留のように再開発で高層ビルが建ち並ぶ街は、上階に企業オフィス、下層階には飲食店などのテナントが入る形が多い。まさか汐留がと思っているうちに、約800人が働く新宿のオフィスを持つ企業から感染者がいると公表され、大崎ゲートシティではテナント従業員の感染が判明、新丸ビルでも同所のイベントに感染者が参加していたことがわかった。ゲートシティに隣接するビルにオフィスをかまえるある企業では、部署ごとに上司が部下の体温を毎日、確認する“仕事”が追加された。

 周辺も巻き込む警戒ぶりを伝え聞けば、今後、都心のそこかしこで同じような事態が起きる可能性が高まっているといえよう。一方でこの緊急時に、あれだけ政府が旗振りしてもすすまなかった「働き方改革」が、強制的にすすむのではないかという期待も高まっている。

 新型コロナウイルス対策として時差出勤にリモートワーク、在宅勤務という新しい働き方に切り替えるという声明が続いた。今まではこういった決意表明がされても、いっこうに人々の働き方は変わらず、日々の暮らし方は改善されないと諦めムードが漂っていたが、今回は様子が違っている。時差出勤や在宅勤務が本当に推奨されているからだろう、満員電車が緩和されているのだ。周辺の企業が次々とリモートワークに切り替え始めたというオフィスビルで働くB氏が「本当に人が少なくなったんです」と驚きながらいう。

「2週間前までは地下通路にびっしり、ターミナル駅を出た大勢の人が歩いているのが普通の光景でした。ところが先々週から徐々に人が減り始め、最近は人もまばらで閑散としているほどです。通勤電車は混んでいますが、これまでの殺人的な密集ぶりを思うと雲泥の差で、座席に座れることも増えました。私は通勤していますが、不要不急の集まりを減らそうと予定されていた会議が見直されて数が減り、仕事しやすくなったんですよ」

 新型コロナウイルス騒動が収束しても、より人間らしい働き方は続くことが期待されている。

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