◆あと何度自分自身卒業すれば
1980年代は柏原芳恵の『春なのに』(1983年)、斉藤由貴の『卒業』(1985年)、菊池桃子の『卒業』(1985年)など、アイドルが歌う卒業ソングがヒットする一方で、長渕剛の『乾杯』(1980年)、尾崎豊の『卒業』(1985年)など、硬派な卒業ソングも誕生した。
「80年代になると、70年代の敗北感や迷いがなくなっていきます。長渕の『乾杯』にも“俺たちは頑張るんだ”という前向きな空気が流れている。尾崎の『卒業』も同様で、卒業後の自分探しがテーマになっている」(富澤氏)
学生たちがカラオケボックスで歌えるようになったのもこの時代。「尾崎ファン」を公言するお笑いコンビ・テツandトモのトモ(49)はこう話す。
「高校時代の親友と今後の人生について語り合った後、カラオケで肩を組みながら『卒業』を熱唱しました。尾崎豊さんの魂のこもった歌声、語りかけるように始まってラストで畳みかけるメロディーラインに惹かれました。実は、コントのネタになっている『なんでだろぉ~』の最後の『お~』の歌い方は、尾崎豊さんに影響されています」
2000年代に入ると、森山直太朗の『さくら』(2003年)やいきものがかりの『YELL』(2009年)に代表されるように、未来の自分へエールを送る卒業ソングが人気を博す。
「70年代までの『卒業は別れ』というイメージから、『卒業は新しい出会いの始まり』というイメージに変わり、自分を鼓舞するメッセージが聞き手に響くようになったのでしょう」(富澤氏)