国際情報

「中国の人権弾圧」告発映画 監督が明かす撮影秘話

未経験ながらもカメラを回し続けた主人公の孫毅 (C)2018 Flying Cloud Productions, Inc.

 中国共産党の人権弾圧を取り上げたレオン・リー監督のドキュメンタリー映画『馬三家(マサンジャ)からの手紙』(3月21日より新宿 K’sシネマほかで全国順次公開)で驚かされるのは、実際に中国で起きた出来事がリアルに映し出されることだ。カメラは中国の町や現地の人々の様子を追い、警察や役人といった当局の関係者が実際に業務する姿を生々しくとらえる。言論の自由がなく、情報が厳しく統制される中国でこんなスリリングな映像をどうやって撮影したのか……と気になる映画なのだ。

 なぜそんな撮影ができたのか。その謎を解くカギは、撮影方法と撮影者にある。

 映画は、米オレゴン州に住む主婦が中国製の飾り物が入った箱から、1通の手紙を見つけるエピソードで始まる。そこには中国の労働教養所で働く中国人が助けを求める声が綴られていた。

 この手紙を書いたのは、北京在住のエンジニア・孫毅(スン・リー)。彼は法輪功の熱心な学習者として中国当局の監視対象となり、2008年2月に遼寧省の馬三家労働教養所に送られ、1日15時間以上の労働や洗脳のための拷問を強いられた。そこで教養所の実態を暴露する手紙を秘かに書き、労働で作製する飾り物に忍ばせたところ、8000キロ離れたオレゴンに届いたのだ。

 デビュー作『人狩り』で中国の違法臓器売買を取り上げたカナダ在住のリー監督は中国国内に築いた地下人脈を駆使して教養所を出所した孫を発見し、スカイプで会話した。初めて孫と会話を交わしたときの印象をリー監督が振り返る。

「孫さんは、見た目は予想外に弱々しい学者タイプでしたが、内面の強さを持っていました。自らが受けた拷問について、まるで他人の話をするように冷静に語る姿が印象的でした。彼は『人狩り』を知っていて私を信頼してくれたので、中国共産党の実態をリアルに伝えるドキュメンタリー映画を一緒に作ることを合意しました」

『人狩り』の影響でリー監督は中国に入国できず、撮影は未経験の孫が行うしかなかった。リー監督はスカイプを通じて映像技術を孫にトレーニングした。

関連キーワード

関連記事

トピックス

中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン
渡邊渚アナのエッセイ連載『ひたむきに咲く』
「世界から『日本は男性の性欲に甘い国』と言われている」 渡邊渚さんが「日本で多発する性的搾取」について思うこと
NEWSポストセブン
 チャリティー上映会に天皇皇后両陛下の長女・愛子さまが出席された(2025年11月27日、撮影/JMPA)
《板垣李光人と同級生トークも》愛子さま、アニメ映画『ペリリュー』上映会に グレーのセットアップでメンズライクコーデで魅せた
NEWSポストセブン
リ・グァンホ容疑者
《拷問動画で主犯格逮捕》“闇バイト”をした韓国の大学生が拷問でショック死「電気ショックや殴打」「全身がアザだらけで真っ黒に」…リ・グァンホ容疑者の“壮絶犯罪手口”
NEWSポストセブン
“ミヤコレ”の愛称で親しまれる都プロにスキャンダル報道(gettyimages)
《顔を伏せて恥ずかしそうに…》“コーチの股間タッチ”報道で謝罪の都玲華(21)、「サバい〜」SNSに投稿していた親密ショット…「両親を悲しませることはできない」原点に立ち返る“親子二人三脚の日々”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
「山健組組長がヒットマンに」「ケーキ片手に発砲」「ラーメン店店主銃撃」公判がまったく進まない“重大事件の現在”《山口組分裂抗争終結後に残された謎》
NEWSポストセブン
ガーリーなファッションに注目が集まっている秋篠宮妃の紀子さま(時事通信フォト)
《ただの女性アナファッションではない》紀子さま「アラ還でもハート柄」の“技あり”ガーリースーツの着こなし、若き日は“ナマズの婚約指輪”のオーダーしたオシャレ上級者
NEWSポストセブン
財務省の「隠された不祥事リスト」を入手(時事通信フォト)
《スクープ公開》財務省「隠された不祥事リスト」入手 過去1年の間にも警察から遺失物を詐取しようとした大阪税関職員、神戸税関の職員はアワビを“密漁”、500万円貸付け受け「利益供与」で処分
週刊ポスト
世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン