国内

特殊詐欺集団 海外拠点でのかけ子の監視体制に変化

2019年5月、タイで摘発された特殊詐欺グループが日本へ移送された(時事通信フォト)

2019年5月、タイで摘発された特殊詐欺グループが日本へ移送された(時事通信フォト)

 ちょうど約一年前に一斉摘発された特殊詐欺グループのタイの拠点は、建物こそ高級リゾート地の邸宅だったが、何人もの日本人男性が軟禁状態でかけ子として電話をかけ続けていた。詐欺の海外拠点といえば、奴隷状態で働かされているのが普通だった。ところが、昨年から摘発が続くフィリピンでの特殊詐欺では、収監されたリーダー格の男性を心配して現地の女性が面会に訪れるなど、軟禁状態とはほど遠かった様子が見えてくる。なぜ海外でのかけ子の生活が変わったのか、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
「彼は……名前は知りませんが何度かお店に来たことがありますね。彼女と彼女の友達っぽい女性と3人で来店されたこともありました」

 Facebookのビデオチャットを使ったインタビューで筆者にこう明かしたのは、フィリピン・マニラ市内の飲食店従業員の邦人男性(20代)。現地を訪れる日本人観光客に人気のナイトクラブなどが点在する繁華街に位置する飲食店に、昨年11月、フィリピンから日本国内に「特殊詐欺電話」をかけていたとして逮捕された日本人36人のうちの一人・M容疑者(20代)が通っていたというのである。筆者がMのSNSアカウント、そしてそこに掲載されていた写真を見せると、散らばっていた記憶の糸が繋がったかのように続ける。

「昨年の秋頃からですね、来られるようになったのは。スポーティーなファッションで、今時の日本人の若い男性という感じ。来られる度に、腕や顔、手にタトゥーが増えていったんで覚えています。連れていた女性はフィリピンの方、おそらくナイトワークをされている女性で、最初は客と従業員、いわゆる『アフター』風だったのですが、そのうち懇意になり、最後はお付き合いをされていたと思います」(飲食店従業員)

 だとすれば、いわゆるオレオレ詐欺など「特殊詐欺」について取材を続けてきた筆者にとって、一つの説が崩れたことになってしまう。

 例えば、フィリピンやタイ、そして中国などに渡り、そこから日本国内に詐欺電話をかけて逮捕されたという日本人のほとんどは、自らの借金などを理由に、まとまった金を集中して稼ぎたいと海外へ割のいい仕事をしにいったつもりでいた。彼らは帰国後に「奴隷のような状態だった」「監視され逃げられる環境ではなかった」と異口同音に、自身が「騙されて詐欺に加担した」と弁明するばかりだった。

 ここでの「騙された」というのは、ほとんどの場合で「詐欺をやらされるとは知らなかった」ではなく「儲かるし遊び放題だと聞いていたのに、実態は違った」というものだ。だがMの場合は、海外拠点で仕事をするきっかけは以前の騙されたと主張していた人たちとあまり変わらないのだが、現地で彼女まで作り、夜な夜な繁華街を遊び歩いていたということになる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

お笑いコンビ「ガッポリ建設」の室田稔さん
《ガッポリ建設クズ芸人・小堀敏夫の相方、室田稔がケーブルテレビ局から独立》4月末から「ワハハ本舗」内で自身の会社を起業、前職では20年赤字だった会社を初の黒字に
NEWSポストセブン
”乱闘騒ぎ”に巻き込まれたアイドルグループ「≠ME(ノットイコールミー)」(取材者提供)
《現場に現れた“謎のパーカー集団”》『≠ME』イベントの“暴力沙汰”をファンが目撃「計画的で、手慣れた様子」「抽選箱を地面に叩きつけ…」トラブル一部始終
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン
自宅で
中山美穂はなぜ「月9」で大記録を打ち立てることができたのか 最高視聴率25%、オリコン30万枚以上を3回達成した「唯一の女優」
NEWSポストセブン
「オネエキャラ」ならぬ「ユニセックスキャラ」という新境地を切り開いたGENKING.(40)
《「やーよ!」のブレイクから10年》「性転換手術すると出演枠を全部失いますよ」 GENKING.(40)が“身体も戸籍も女性になった現在” と“葛藤した過去”「私、ユニセックスじゃないのに」
NEWSポストセブン
「ガッポリ建設」のトレードマークは工事用ヘルメットにランニング姿
《嘘、借金、遅刻、ギャンブル、事務所解雇》クズ芸人・小堀敏夫を28年間許し続ける相方・室田稔が明かした本心「あんな人でも役に立てた」
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《真美子さんの献身》大谷翔平が「産休2日」で電撃復帰&“パパ初ホームラン”を決めた理由 「MLBの顔」として示した“自覚”
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《ラジオ生出演で今後は?》永野芽郁が不倫報道を「誤解」と説明も「ピュア」「透明感」とは真逆のスキャンダルに、臨床心理士が指摘する「ベッキーのケース」
NEWSポストセブン
渡邊渚さんの最新インタビュー
元フジテレビアナ・渡邊渚さん最新インタビュー 激動の日々を乗り越えて「少し落ち着いてきました」、連載エッセイも再開予定で「女性ファンが増えたことが嬉しい」
週刊ポスト
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
【斎藤元彦知事の「公選法違反」疑惑】「merchu」折田楓社長がガサ入れ後もひっそり続けていた“仕事” 広島市の担当者「『仕事できるのかな』と気になっていましたが」
NEWSポストセブン
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(61)と浜田雅功(61)
ダウンタウン・浜田雅功「復活の舞台」で松本人志が「サプライズ登場」する可能性 「30年前の紅白歌合戦が思い出される」との声も
週刊ポスト