「愛情だけでは介護はできない」
「頑張らせてこの世に引き留めることが、その人のためだろうか」
本書の至る所にちりばめられた生き死にに対する問い掛けは、説得力を持って響く。それは死という重いテーマに挑み続けた著者ゆえだ。実家では難病の母を介護する父の背中を見守り、7年間の取材を支える原点になっていた。
死に対する恐怖は多かれ少なかれ誰にでもある。できれば苦しまずに、好きな人に囲まれて安らかに、というのが理想の形ではないだろうか。病院ではできない生活の場が、在宅にはある。臨終を迎えた森山が伝えた「命の閉じ方」に、著者は惑いながらも答えを探し求めていく。治療を捨て、何にも縛られず、好きに生きる。その散り際は、死との向き合い方に新たな気づきをもたらしてくれるのである。
※週刊ポスト2020年4月17日号