対人距離に加え、マスクに対する考え方も異なります。「目元/口元理論」というのがあって、「欧米人は口元で相手の感情を推察するので、サングラスは気にしなくてもマスク姿を不気味に感じる。アジア系は目元で感情を読み取れるので、サングラスを怖いと思うがマスクは気にしない」とされます。また欧米の言語は破裂音が多く、飛沫の飛び方が異なるという見方もあります。どちらも研究によって証明されているわけではありませんが、説得力はあると思います。
東洋と西洋の気質や生活習慣、文化的な違いが、感染拡大の勢いの差にあらわれているのではないでしょうか。
◆累積死亡者チャートは強力な「予測ツール」
国別の状況を比較するには、感染者数より死亡者数をみるのが確実です。感染者数は国ごとの検査のやり方で変わりますが、東アジアや欧米であれば、病院は院内感染を防ぐためにも、肺炎で入院した患者をすべて検査するはずです。死亡者数はごまかしようがないのです。
死亡者数の特徴は、遅行指標だということです。潜伏期間を5日、発症・入院から死亡までを平均14日とすると、現在の死亡者数は19日前の感染状況を反映していることになります。医療崩壊を起こしたイタリアでは、平均して入院から8日で死亡していると報じられましたが、この場合は13日前の状況を反映しています。
ロックダウン(都市封鎖)しても、それ以前の感染者数は変わりませんから、2~3週間は入院数も死亡者数も増えつづけ、効果が現われるまで20日間程度かかります。つまり、2~3週間後の未来(死亡者の人数)をほぼ確実に知ることができます。累積死亡者チャートは強力な「予測ツール」なのです。
日本は感染者数が増えていますが、死亡者はそれほど多くありません。その理由も、死亡者数が遅行指標だということで説明できます。また、感染者数が減り始めてから死亡者数の減少が確認できるまで3週間程度かかるので、いったんロックダウンするとすくなくとも1か月は解除できません。