いま、チャンさんは6畳あまりの部屋で拾ってきた犬3匹と暮らしている。家賃は日本円にして2万円。収入は生活保護費の4万円だけだという。そして何よりも、家族も友人もいない孤独な生活と、韓国社会に残る米軍慰安婦への差別意識が彼女を苦しめている。

「私達が苦労してドルを稼いだことが、韓国の高度経済成長のベースになったんじゃないの? ドルを稼いだから韓国は豊かになったんじゃないのかしら。

 米軍慰安婦はみな悲惨な生活をしているよ。歳を取って基地村を離れてしまうと、私達は韓国人社会に馴染むことができないの。稼いだお金も騙し取られたり、米軍人に盗まれたりして全て失ってしまったわ。あんなに苦労してきたのに、歳取ってからもヤンガルボ(売春婦への蔑称)と言われ、外出すると、無視されたり、酷い言葉を言われる。だから、このように部屋に籠って生活している。このほうが楽なのよ。

 テレビで日本軍慰安婦問題のニュースをよく見ます。日本軍慰安婦と米軍慰安婦の何が違うのかしら。どちらも体を売らされた女性なのに……。

 それでも日本軍慰安婦の方々はみなに支援され、国がたくさん面倒みてあげているじゃない。一方で私達はずっと貧乏で、僅かな補助金だけ。本当に死ぬことが出来ず生きているだけという生活なの。体を売らされたのは同じじゃないの? 私達はあんなに韓国のために働いたけど、国からは何もないよ。

 もう長く生きるわけでもないし、私達はたくさん助けが欲しいわけじゃない。政府が責任を認めて、少しでも支援をして欲しいというだけなの」

──チャンさんはそう語り終えると、寂しそうに微笑んだ。「本当のことだから、顔も名前も出しても構わない」と彼女は言った。

 米軍慰安婦の裁判は、一審では「(性病治療に関する)国家の不法収容状態での一律的処方と隔離収容治療」についてだけ非を認めた。2018年2月8日に出されたソウル高等裁判所の判決では、「担当公務員などが駐屯外国軍の士気高揚や外貨を獲得するという意図で売春を正当化・助長化して基地村元慰安婦達の基本的人権である人間的尊厳性を侵害した」とさらに踏み込んだ指摘をし、「米軍慰安婦117人中74人に政府は700万ウォン(約70万円)ずつ支給して、43人には300万ウォン(約30万円)ずつ支給せよ」との判決を出した。韓国政府の責任を認め、損害賠償を命じる判決だった。

 日韓合意では日本軍慰安婦に対して1人約1億ウォン(約1000万円)が支払われることが決まっていた。はたして日本軍慰安婦と米軍慰安婦にはどのような違いがあったのだろうか。

※赤石晋一郎・著『韓国人、韓国を叱る』(小学館)より一部抜粋

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